鋼の錬金術師〜氷凜の錬金術師〜

□脱出、ダブリスへ
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『…グラトニーは
エンヴィーとそのお父様だったら
どっちの言うことを優先する?』

グ「…うん??」

指をくわえて首をかしげている

『だから、お父様とエンヴィーだったら
どっちの言うこと聞く?』

グ「うーん…お父様!」

…よし

『…俺、そのお父様と昨日話したんだけどさ
俺をここから出せって言ってたぜ?』

グ「えっ?」

『だからさ、この鎖はずしてくんねぇーか?』

首の鎖を指さしてそう言うと
おどおどとしているグラトニー

『お父様の命令は絶対、だろ?』

いい調子、いい調子

グ「でも…でも、そんなことしたら
おで、エンヴィーに殺される…
うー…あ!お父様に聞いてくる!」

『え』

グ「いってきまーす」

どだだだだ

そう言うとグラトニーは走って行ってしまった

『…くっそ、ダメだった


…って、え…?』


扉を見ると

『はぁ…開けっ放しじゃん』

グラトニーの馬鹿さ加減にあきれる

『…逃げるなら今しかねぇな…』


でもどうやって?


錬成陣の書かれたブレスレットはない

獣化しようにもエンヴィーに謎の薬を打たれて
思うようにできない

まぁその薬と一緒に発作を止める薬も
打たれていたからその点に関しては
好都合だったが…


『何かないか…何か………あ』

ふと目にはいったのは机の上にあるナイフ

『っ…ギリ届かねぇ…』


手を伸ばしても届かないので
仕方がなく足を伸ばしてとる

『よっ…』

ガチャッ

鎖にナイフをさす

ガチャッガチャッ

さすがにナイフを動かすだけでは
外れるわけがない

『くっそ…外れろっ!』

ガッ ガッシャッ

首も精一杯動かしてやるものの、
ただ疲れるだけで無理だった

『くっそ…
ブレスレットがねぇとなんもできねぇって…』

はぁ、とため息をつき
ナイフを見つめる

『…あ!』

ツプッ…

『んっ…』


腕にナイフで傷をつけ
血を流す

『…足りねぇかな…?』

グチャッ

『いっ…!』

加減がわからずさしこみ過ぎて
血が溢れでる

『…まぁいいか…』

ピリピリと痛む腕から流れ出る血を
指につけて壁に錬成陣を書く

ペタッ

ガガガガッ……バキンッ


『…よしっ』

壁を伸ばして鋭い刃物にして鎖を切る

首輪と鎖は一部残っているが
今はさっさと逃げる方を優先

『荷物は…あった!』

隅においてある箱の中にあった
俺の荷物を取り出す

どうやって見つけ出したのかは定かではないが
エンヴィーが俺が泊まっていたホテルから
持ち出したらしい
この前エンヴィーがそう言っていた


そして適当に服を選んで着て
その部屋から出た






『…どこだ、ここ…』

まわりを見るものの、全くわからない

ただすごく変な気持ちがする

胸がざわざわして気分がいいとはとても言えない

『…はやくここから出よう』

そう呟いて俺は鞄を持ったまま
走って出口を探した





*:・゜。*:・゜*


何分たっても


『出口が見当たらねぇ…つかここ広っ』

同じような場所が多くて困りながらも
歩き続けている

『くっそ、行き止まりかよ……ってあ!』


よく見るとその行き止まりの壁に
とってのようなものが縦に並んである
頭をかきながら見上げると
マンホールのようなものがあった


『え、ここ地下なのかよ…』

カンカンカン ガッ

そこをのぼり、マンホールを開けると
路地裏のようなところに出た


『…ふぅ…ようやく出れたか…』

路地裏から出て
少し明るい方へと歩いていくと
きれいな月が雲ひとつない空に浮かんでいた




ドクンッ


『…っ』


エンヴィーに打たれていた薬が切れたのか
急に胸が苦しくなってきた

『ごほっごほっ』

胸をおさえながらゆっくりと歩いていく

『ここはどこなんだ…?』

見上げてみると看板があり、
セントラルシティと表記されていた


『セントラルか…』

一度泊まっていたホテルに戻ってみようと思い
適当に歩いていると


なぜかあいつがいた



ロ「…氷凜の…?
なぜこんな時間にこんなところに…」

『…大佐こそ、ごほっ…
こんなところでなにしてんだよ』

大佐は普段なら東方司令部にいるはず

こんな時間に何をしに…?


そんなことを考えていると
だんだん目の前がぼやけて頭が痛くなってきた

ロ「少し用事があってな…
…と、その前に君、顔色が悪いぞ?
それにその首のはなんだ?」

『…っ…悪い…大佐』

ドサッ

ロ「…⁉ 氷凜の!」




遠退く意識の中

大佐の声が最後に聞こえた






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