聖闘士星矢

□聖戦の終結…?
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エリュシオン。
選ばれた魂のみが行き着く楽園。
その魂は未来永劫、楽園にあり続ける筈だった。
しかし、美しかったその楽園は、アテナと冥王の死闘の果てに、冥王が討たれたことにより冥府もろともに崩れ去ろうとしていた。
空は黒く染まり、神殿群は崩れ落ち、その大地は割れ裂け妖精達を無情に引きずりこむ。
導かれた魂達とて、例外ではない。
行き場をなくし、待つのは消滅しかなかった。
妖精達が絶望の中、立ち上る黒煙と轟音を裂くように、黒い影が渦を巻いた。
それは強い波動となって、魂達と妖精達を包みこむ。
「彼奴ら、やりすぎだ」
苦々しいその声に、妖精達は歓喜した。
「奴等もこいつらの救済ぐらいできないのか」
どこか嘲笑さえ滲ませるのは、銀髪銀眼の青年神。
「所詮、冥界の秩序も知らぬ輩どもだ」
それに応じたのは金髪金眼の、瓜二つの青年神。
星矢達に倒されたはずの双子神が、忽然とその尊容を現した。
死と眠りは、心理の中心。
エレボスの分かたれた形であり、いかなる破壊も干渉できない。
「タナトス様!ヒュプノス様!」
妖精達が一斉に泣きすがってきた。
双子神は、彼女らを受け入れその恐怖を労った。
「死を決めるのは、俺の仕事だ」
銀髪銀眼のタナトスが手をかざす。
「エリュシオンの死は望まん」
不敵な笑みの表情のままタナトスはコスモを高める。
「エレボスの作った世界は、異なる秩序で動いてるんだよ」
「その仕事をハーデス様が引き受けただけのこと」
ヒュプノスもコスモを高める。
「エリュシオンのに導かれた魂と妖精達の安らぎは私が決める」
銀と金、対照的なコスモがエリュシオンに満ちていく。
「さあ、原初に還れ」
双子神は同時にそのコスモを放った。
死と眠りのコスモが、全てを一瞬で無に変える。
何もない原初のエリュシオンが、そこにあった。
「久しぶりに使ったな」
ヒュプノスがタナトスをみやる。
「ま、面倒くさいがこんなのすぐだ」
「違いない」
原初神の御技を彼らは使ったのだ。
「エレボスから授かったこの力を奴等に使いたかったな」
悔しさを滲ませタナトスが呟く。
「今回の聖戦、神聖衣5体も反則だろ」
ぼろぼろに砕かれた自らの冥衣を見やり、タナトスは頬を歪めた。
「子供みたいなことを言うな、タナトス。戦いには使うなと、エレボスに念押しされているだろう」
呆れ顔でヒュプノスが嗜める。
「守れなければ我々は、エレボスに還らされる」
「ふん」
タナトスはしかめっ面でエリュシオンに降り立つ。
ヒュプノスも魂達と妖精達を率いて続く。
「お前、神として仕事したくないだけだろう」
「悪いか?冥界の仕事から解放されたと思ったのに、昔に逆戻りだ」
「お前という奴は」
ヒュプノスはしかし、笑っていた。
「なに、働くと言っても千年待てばいいさ」
分かっているさ、とタナトスもにやりと笑う。
「その頃にはハーデス様も復活なさっているだろうからな」
「それまでは、神らしく働こうではないか」
「神らしく、か」
双子神は顔を見合せ、笑う。
「次の聖戦までには冥王も冥王軍も復活している」
ヒュプノスは断言し、タナトスも頷く。
「人が神を忘れぬ為の神の謀だ。オリンポスも酷いものだ」
「真実を知ってアテナはオリンポスと戦うかな」
くつくつと嗤う声がエリュシオンに落ちる。
「ハーデス様に殺されていた方がまだ幸せだったろうに」
とタナトス。
「次の千年後を待とうではないか。
聖域とアテナがどうなるか」
とヒュプノス。
「そうだな。それまで神らしくやるか」
「忙しくなるぞ」
そう言いながらも双子神は笑っていた。

聖戦は神の謀故に。

全ては決まっているから。

冥王軍の敗北も。

計算違いがあるとすれば、それはハーデスの体の破壊だけ。

全ては計画通りなのだ。

次の聖戦さえも。

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