シリーズ小説

□可愛い部下A
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「忘れて欲しいことってさ、昨日の晩のことか?」

「・・・・っ」

 顔を下に向ける速水の身体は強張り、完全に恐縮している。
少し可哀想だと思うけれど、反応が可愛らしくてつい苛めてしまいたくなる。

何だか昨日の晩から俺はおかしい。


「俺のこと好きなの?」

 声を低くして問いかけると、相手から息を飲む音がした。


「あの・・・昨日は・・・・酔ってて・・・」

「酔った勢いで言っただけ?」

「あ・・・・えっと・・・・ぁ・・・・」

 声を震わす速水の肩を抱き、身体を密着させる。
逃げも拒みもしないで、ただ身を固くする速水をさらに追い詰めるように、俺は耳元で囁いた。


「お前昨日泣きながら俺に好きです好きですって言いながら、ちんこおっ勃ててたの覚えてる?」


「・・・・ッ」


「俺の膝に勃起ちんこ擦りつけてすげぇよがってたけど。」

「あ・・・・・・」

「そう言う趣味してたんだ?」

 俺に詰るように言われ、速水の目から涙が溢れた。


「あっ・・・すぃません・・・・すいません・・・・・ひぅ・・・っ・・・」

 本格的に泣きだして、やりすぎたかなとも思った。
でも、嗚咽交じりに謝る速水の姿に興奮していたのは確かで、胸の鼓動が高鳴った。


「先輩・・・すいませっ・・・・・っ・・・・ひっく・・・・」

 泣きじゃくる速水の背中をあやすようにさすりながら、ゆっくりと身体を引き寄せる。


「泣くなよ、俺は別に責めてないんだから」

 優しくゆっくりとそう言い聞かせ、頭を撫でる。
速水の本心が聞きたくて、俺は言葉を続けた。


「昨日の夜のことは全部酔った勢いなのか?」

「・・・・・」

「俺に言ったことも全部、速水の本心じゃないってことでいいんだな?」

 速水がそこで肯定してくれれば、また今まで通りの関係でいられたはずだ。
でも速水は顔を上げ、首を振りながら違う、とそれを否定してしまった。


「っ・・・好きです・・・・ずっと先輩のことが好きでした・・・・」

 涙に濡れた瞳でそう言われ、俺の鼓動はドクンの大きく高鳴った。

「ずっと、憧れてたんです。でも、絶対引かれるから、言わないって決めてたのに・・・」

 俺に、というよりは自分に言い聞かせるように、速水は胸の内を告白する。

「先輩に嫌われたら俺・・・・もう・・・」


 感情が高ぶってしまったのか、また涙を溢れさせる速水の小柄な体を胸に抱き寄せる。

「引かないよ。別に否定してないし、泣くなよ。」

「え・・・・」

 俺の言葉に驚いたのか、目を丸く見開き俺を見上げた。
若干赤く染まったそのなめらかな頬を指先で撫でる。

「まぁ、男同士で恋愛とはよくわかんないけど。でも気持ち悪いとかは思わねぇよ。それに・・・」

 速水の耳に唇を寄せ、声を潜めて続けた。


「昨日のお前には普通に興奮したけど。」
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