シリーズ小説

□可愛い部下A
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マンションの大きな窓から差し込んだ朝日の眩しさで、いつの間にか眠りに落ちていた俺は目を覚ました。


「・・・・今、何時・・・・?」


 重い身体を起こして見渡すと、見慣れない部屋。
どうやらソファーの上で眠っていたらしく、身体が少し痛い。
ぼやけた頭で俺は昨晩の記憶を辿った。


「あ・・・・」


 入口から人の気配を感じ、目を向けるとそこには驚いた顔をした後輩の速水の姿が。
俺と視線があった途端に目を逸らし、気まずそうな顔をしている相手を見て、俺は昨日の晩の出来事を思い出した。




 昨晩、飲み会の途中で酔いつぶれた速水をこの部屋まで送っていった。
泥酔して意識が朦朧としている速水が泣きじゃくりながら俺に告白して来て・・・



 すべてを思い出して俺はあっと声をあげた。
それでもそのあとに言葉を続けることはできず、速水も黙ったまま。
気まずい沈黙がしばらく流れた。


「あの・・・・昨日は、その・・・・すみませんでした。」

 沈黙を破ったのは速水。
すごく気まずそうに恐る恐るといった感じで話し出す。


「昨日は酔ってて・・・迷惑かけてすみませんっ。あの、昨日のことは本当、忘れてください。」


 一気に捲し立てて、泣きそうな顔で顔を伏せた速水に対し、俺はなぜか加虐心がそそられた。
もしかしたら昨日の酔いがまだ冷めていないのかもしれない。


「忘れるって何を?」

 あえて意地悪にそう問うと、速水は驚いた顔をして、視線を泳がせた。


「えっ・・・あ、あの、・・・」

 しどろもどろになりながら言葉を探す速水が可愛らしくて、もっと意地悪な気持になってしまう。

俺は立ち上がり、ゆっくりと速水の方に歩み寄ると、速水は逃げるように一歩ずつ後ずさる。
それでもそう広くない部屋ではすぐに逃げ場がなくなった。

近づく俺に怯えるような視線を向ける相手の肩に手を伸ばすと、その華奢な身体がびくりと震えた。
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