シリーズ小説

□可愛い部下@
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「おーい、起きろ、おい速水ぃ・・・・。」


 そう言って俺は速水の肩を揺するが、いつもは飲まない酒を大量に煽り、泥酔した我が部下の耳には届いていないらしい。

「う〜・・・ん・・・・」

 速水は顔を真っ赤にしながら呻いている。
俺が肩を貸してやらなければ今すぐその場に崩れ落ちるだろう。
 細身の身体とはいえ、男一人の全体重を掛けられればまだあまり酔っていない俺だってふらついてしまう。

「お前がまさか、ここまで酒が弱いとは思わなかったよ。」

 どうせ聞いちゃいないと分かっていながらも俺は小さく溜め息をつく。
いつもは穏やかで物静かな後輩がここまで乱れるとこちらが参ってしまう。



(・・・まぁ、無理やり飲ませたのは俺なんだけど・・・・。)





 今日は会社の親睦会で、いつも以上に盛り上がった。
飲めないとやんわり断る速水に今日は無礼講だ何だと半強制的に酒を飲ませたのはこの俺。

 案の定慣れない酒に速水はすぐにダウンして、早々に帰ると言ったものの、完全に制御できてないであろうその酔った状態じゃあ一人で帰らせるには心許なくて、
俺が家まで付き合うことにした。

「おれ、一人で帰れます・・・・先輩は皆さんと二次会に行ってください・・・」

 速水は迷惑かけたくないとぐずったけれど、俺は無理矢理奴の肩を抱いて店をあとにした。

(・・・・で、今に至るわけだが・・・・)


 速水は吐き気がするのか、それとも頭が痛いのか、とにかく顔を俯けながら先ほどから終始無言を決め込んでいる。
俺が何度か声を掛けても小さく呻いたりするだけだった。

柔らかな物腰ながら隙がなく、いつもしっかりしている速水の普段とは違うその姿が少し新鮮かもしれない。
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