多目的
□お預けとご褒美
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「ちょっと」
『何ー?』
「いいから、…おいで」
放課後。
私はというと、応接室で雲雀さんの仕事が終わるのを静かに待っていた。
どれくらい時間が経ったかわからないけど、雲雀さんは作業する手を止めて私を呼んだ。
手招きされ、私はソファーから立ち上がり、雲雀さんの側に行く。
「こっち、」
雲雀さんはくるりと椅子を回し、私が自分の正面にくるようにすると、手をのばして私の腰を引き寄せた。
『どうしたの?』
「…別に」
そう言いながらも、私は開かれた雲雀さんの脚の間におさまるくらい近くに引き寄せられてて、当の本人はと言うと、私の顔を見ようともせずに、胸に顔を埋めている。
私が黙って雲雀さんの頭を抱き締めるようにして撫でてあげると、雲雀さんの腕に力が入るのがわかる。
『疲れちゃった?』
「……うん…」
私が聞くと、雲雀さんは胸に顔を埋めたまま、呟くように言った。
『そっか。…仕事、終わったの?』
「……まだだけど」
雲雀さんが少しムッとしたのがわかる。
そんなつもりじゃなかったんだけどな。
『――恭弥、』
私が雲雀さんを名前で呼ぶと、雲雀さんはぴく、と反応した。
『ねぇ、こっち向いて?』
「――何」
雲雀さんがしぶしぶ腕の力を緩め、顔を上げる。
あ、不本意そうなカオしてる。
ほっぺた紅くしちゃって…可愛い。
ちゅ、と音を立ててキスをすると、雲雀さんはびっくりしたような顔をしたけど、すぐに私の頭の後ろに手を添えて口づけようとしたから、私は笑って、駄目、と言う。
「…なんで」
だって、『ご褒美』にした方が、後が楽しみでしょ?
私がそう言うと、雲雀さんはくるりと椅子を回して机に向き直った。
「…全く。君だけだよ、僕を顎で使えるのは」
後で腰が立たなくなるくらい、愛してあげるから。