甘い記憶


□07#移ろぐ時
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「はぁ?なにそれ!」






登校してきた生徒の
ざわめきの中で
そう大きな声が昇降口に響いた





「ちょ!大きいよ、声!」



大きな声を上げた翠ちゃんに
しー!と人差し指を口に持っていく





「いや、だってさ
あの佐伯でしょ?
高校始まって間もないのに
もう学年一人気者の」







翠ちゃんに朝会ってすぐに
昨日のことを言った

すると佐伯君がした行動に
すごく驚いていた





「うん?よく佐伯君のことは
わからないんだよね」




私たちはそう話をしながら
上履きに履き替えて
教室へと向かった




日向バカが、数段階段を
あがったところで
翠ちゃんがボソッとそう言って
ワーワーと騒ぎながら
教室までやってきた










「どんだけ好きなの、ほんと」





「だって好きなんだもん」







少し呆れ顔の翠ちゃんを背に
そう言いながらガラリと
教室のドアを開けた











「あ…あぁ、ビックリした
おはよう、片倉さん」






「えっ!あ、うん!
おはよう、ございます…」










私が開けたドアの向こうには
佐伯君が立っていて
佐伯君もドアを開けようと
していた様子だった






「ごめんな、昨日
ほんとに大丈夫だった?」






翠ちゃんに佐伯君の話を
していたところだったので
少し戸惑った私は俯き気味で
佐伯君の言葉を聞いていた





するといきなり
頭に軽い重さがかかった








後ろにいる翠ちゃんの
口笛と同時に顔をあげると
優しく笑った佐伯君が
私の頭に手を置いていた






「やっと顔あげた
じゃあ、また後で」





そう言ってニッコリ笑うと
ポンポンと頭を軽く叩き
どこかへと歩いて行ってしまった










「これはこれは…
女子が荒れそうですな」




佐伯君が立ち去ったあと、
翠ちゃんが私の肩に手を置いて
ニヤリと笑って言った







「な、なんで?」



ぐるん、と顔を翠ちゃんに向けて
聞くとまたニヤリと笑った








「だって絶対あいつ、
絢のこと好きじゃん?」












「えええっ!?
ない!ないよ!ない!」





翠ちゃんがいう言葉を
理解するのに少し時間が
かかり、大きな声を出してしまった







それによってクラスの人の
視線を集めることになってしまった






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