Anime

□100点満点
1ページ/2ページ





小さな簡易テーブルを引っ張り出してきて部屋の真ん中に設置する。その上に2人分のノートやら教科書やらを広げればもうジュースなんて置く隙間はない。


「ああ!疲れた!」


手に持っていたシャーペンを投げ出してわああっ、と後ろへと身を投げ出した。ただいま期末考査期間真っ只中です。どうせ1人でいても勉強しないだけだから、と私の彼氏である順平を家に招いて勉強会を開催したのも今から3時間ほど前のことだ。


「まだ全然経ってないだろ」
「3時間も経ちましたぁ」


呆れたような声が聞こえるが、つーんとそっぽを向いて寝返りをうった。そのときにテーブルの足に膝が当たってしまいガタリと音がした。頬をぺたりとつけた床はひんやりとしていて気持ちよかった。


「なにやってたんだ?…うげ、数学かよ。よく3時間も出来たな」


俺無理だわ、と続ける順平に褒めてー、と返せば偉い偉いと棒読みで返された。むっ、として重い身体を起こして机に突っ伏した。


「順平はなにやってたの?」
「生物」
「うへー、やだぁ」


カチカチとシャーペンを押して、ノートに何か書き込んでいる順平の睫毛は意外に長く、まじまじと見つめてしまった。生物の授業いつも寝てるからなぁ、と思って順平のノートを覗き込む。角張った男らしい字がノートを埋め尽くしていた。だけど読みやすく、キレイだった。


「ノートまとめるのうまいね」
「そうか?」


今度から仲の良い友達じゃなくて順平からノート借りよう、と心に決めて身体を元の場所へと戻した。パラリと教科書をめくった順平は手で口を覆い隠すように肘をついた。不覚にもカッコいいなんて思ってしまった。


「俺ばっか見てないでなまえも勉強しろよ」


明日テストなんだから、とこちらを見ずに言う順平に顔が赤くなるのがわかった。気付かれてた!


「べ、別に見てないし!」
「ふーん?」


慌てて言い返すものの顔の赤さは誤魔化せず、ニヤリと笑う順平と目があった。…腹立つ。


「調子のんな、ダアホ」
「お前がダアホじゃ、ダアホ」


癪だったからテーブルの下で手を伸ばして、胡座をかく順平の膝をぺちんと叩くと、テーブルの上で手を伸ばした順平に鼻をキューっと摘ままれてしまった。


「離せぇ!」
「あーもう、なまえのせいで集中力なくなったじゃねぇか」


その手を掴んで引き離そうとすると、順平がパッと手を離しておまけにシャーペンも投げ出した。


「私のせいな訳?」
「なまえ以外いないだろ?」
「心外ですっ」
「そんな難しい言葉使わんくていいぞ」
「難しくないし!!」


ふはっ、と笑う順平に眉を寄せればごめんごめんとまた笑われた。もームカつくなあ。


「マジバのジュース飲みたい」
「は?いきなりだな」
「飲みたいのー」


そんなのそこらで売ってるのと同じだろ、と笑う順平に新発売のキラキラのやつ、と返す。


「なに?キラキラの?」


わたしをバカにしたような笑い方にむっ、と口を尖らせた。キラキラのやつはキラキラのやつじゃん。グラデーションの。


「買ってきてよ」
「外陽射し強いし、やだよ」
「男じゃん」
「男女差別ですー」
「難しい言葉使わなくていいよ」


お返しと言わんばかりにニヤリと笑えば、こいつ…と引きつった笑みを浮かべる順平。


「じゃあ、これ解いたら行くぞ」
「えー、わたしも?」
「いいじゃん、デート」
「…意味わかんない」


口ではそう言いながらも「デート」という言葉にシャーペンを持つ私がいた。単純だな、と自分で笑いながら順平に指定された問題を見た。これなら公式使えばすぐできる、とちらりと順平を盗み見れば、てっきりノートと向き合っていると思ったのに頬杖をついてこちらを見ていた。


「なに見てんだよ」
「……窓の外見たの」


また顔が赤くなる前に苦し紛れの言い訳を放って視線を下に向けた。




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ