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□将来の夢
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あー、ねみぃ…


くあ、と大きな欠伸を漏らして目尻の涙を拭えば担任の声がイヤでも耳に入ってくる。歴史の授業は眠くねぇのにな。そう思って、また欠伸を零した。今は今日最後の授業。といっても担任が進路について話しているだけで、クラスのほとんどの奴らは俺と同じ、もしくは眠気に負けた奴らだけだった。教卓の一番前に席を置く彼女のなまえもその中の一人だ。


…今は進路よりもバスケだなぁ

ぼんやりと思いながら、机の上にある進路の用紙を見下ろした。ご丁寧にも『第一希望』『第二希望』『第三希望』と書かれてある。俺は欠伸でたまった涙を指先で弾くと、『第一希望』の欄に教育大学の名前をかいた。歴史の教師とかいいな、と思い始めている。でも卒業してもバスケと関わっていきたいな、とか。なまえと同じ大学も行きたいけど。だってあいつ見てねぇと危ねぇし…。そんなような思いで、空白だった欄をすべて埋め終わると同時に授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。


「書いた奴だけ持ってこーい。書けなかった奴はこの土日の間に書いて週明け提出なー」


担任はそう言うと出席簿を片手に教室を出て行こうとした。そして一番前で寝ているなまえの頭にそれを落とした。絶対アレは痛い。そう思いながら部活に行く用意をした。今日のメニューなんだろな。この前海常とやったから…。そこまで思い出したところで、海常と練習試合をした帰りのステーキを思い出し、気分が悪くなった。


「おーい、日向」


部活に行く前に水飲んで行こうと心で呟いていると、なまえの頭に出席簿を落とした担任がまだなまえの席の方にいて、俺の名前を呼んだ。なんだ、と思って顔をあげると、出席簿を落とされても起きてはいないなまえを指差しながら少し大きめの声で続けた。


「お前こいつと付き合ってたっけ?」
「はっ?!え、いや…まあ」


なんでそんなこと聞くんだ。しかもでかい声で。担任が声を張って言ってくれたおかげで、クラスの奴らの視線が俺を向いた。仲のいい男共はニヤニヤと笑いながら口笛を吹いたりしていた。


「んじゃ、こいつを起こして職員室に行けって言っとけよ」


担任は俺が返事すると同時に俺の方へと歩いてきていて、通り過ぎるときに肩に手を置き「旦那さん」と呟いた。意味が分からず振り返ると、先生は気にすることもなく歩いていて、俺はカバンを手にすると急いでなまえの席へと向かった。


「おい、なまえ。起きろよ」
「…んー?」


なまえが寝言でも言ったんじゃないかと、集中して聞いてみるがさっきの担任と結びつく言葉は出てこない。そして起きないなまえ。…カントクも行ったしなぁ。部活に遅れそう、となまえの机に手をついてため息を漏らすと、なまえの机とその机に伏せている身体の隙間からさっきの進路の用紙が覗いていた。

…そういやなまえの進路って

聞いたこともないなまえの進路先を覗き込んだ。



『じゅんぺのおよめさん』


ゴンッと腰らへんに当たった教卓が痛い。俺はそれを見た瞬間後ろへと下がってしまった。…いや、待て待て。落ち着け、とひとつ息を吐いてみた。が、心臓の鼓動は緩まることを知らないみたいだ。

これで担任が言ってた意味が理解できた。…うん。かなり嬉しいが、そういう問題でもない。







「起きやがれ!ダアホがぁあ!!」
「いったーい!!!」


持っていたカバンを頭に落としてやった。




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