Anime
□冷徹な人
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「鬼灯さん、資料の整理終わりました」
ここは地獄。
いつもと変わらない日常が続く。
頼まれていた資料庫の整理が終わり、まとめた書類を差し出すと「ありがとうございます」と顔を崩さず答えるのが、閻魔大王の下で二代目の第一補佐官を務める鬼神このお人、鬼灯さんだ。
「いつも早くて綺麗な整理ありがとうございます」
私が渡した書類に目を通しながら、トーンを変えずに言った。
「そうでなければ第二補佐官は務まりませんから」
毎度のことながらこんな少しのことで褒められて舞い上がるのが、第二補佐官の私。と言っても大王の補佐、というか鬼灯さんの補佐と言ったほうが正しいのかも。んと…それと、お付き合い、をさせていただいている…
といってもお互い仕事が忙しくて恋人らしいことなんてなにもないけれど…
「みなさんあなたを見習ってほしいものですね」
その言葉にアハハと漏らせば、明後日の方向を見ながら露骨に眉を寄せた。あ、大王のこと考えてる。その様子にまた笑みが零れた。そのときにピンと浮かんだ。
「ところで、大王はどこに?」
資料の整理しているときといい、ここに来るまでの間といい、大王の姿は見かけなかった。いつもウロウロしてるのに…
私が言うと鬼灯さんは、はーっ、ため息をついて額に手を当てた。どうしたのかと首を傾げれば、その手の間から切れ長の目がこちらを見た。
「また大窯にも入ってるんじゃないんですかね。湯で上がればいいのに」
チッと舌打ちをしながら睫毛を伏せた。またか、と苦笑いを返せば、鬼灯さんは机に立て掛けていた金棒を手にして立ち上がった。
「どちらに?」
「あのデカ物を連れ戻しにです。あなたも来なさい」
そう残してスタスタと歩いていく後ろ姿を見て、慌ててあとを追った。
実は毎度、これが密かにデートだと勝手に思って楽しみにしている自分がいる。