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□細谷佳正生誕祭2016
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カチカチと時計の音だけが響くこの部屋。隣では佳正さんが小さな寝息を立てて頭まで布団を被って眠っている。私はというと目だけを布団から出し、壁に掛けてある時計とにらめっこをしている。

にらめっこをして約30分、短針と長針が12を指したとき、くるりと後ろへと向き直って寝息を立てる愛しい人に上からがばりと覆い被さった。


「佳正さーん!おめでとー!!」


布団を捲ってぐりぐりと頭を擦り付けながら深夜にしては少し大きめの声を耳元で発した。


「っわあ!なに?!」


心底驚いたように飛び起きた佳正さんに満足しながらその背中へと腕を回した。


「何って2月10日だよ?お誕生日おめでと〜」


あ、心臓すごい音

背中に回した腕はそのままにぴたりと胸に顔を付ければドクドクと心臓が動いているのが感じられた。


「ありがとう麻衣、だけどな?
寝てるのを叩き起こすのやめない?」
「なんで?サプライズだよ」
「去年もそうだけど心臓に悪いよ」


ハアと溜息を漏らしながらも本当に嫌がってる様子はなく私を抱きしめ返してくれる佳正さんが大好きだ。


「ふふ、去年のこと覚えてくれてた?」
「そりゃ覚えてるよ」

ありがとうと頭のてっぺんにキスを落とすと同時に起こしていた身体を倒して布団の中へと私を引きずり込んだ。


「ちょっと〜プレゼント取りに行けない」


背中やお尻に手を這わせる佳正さんをパシリと叩いてまた胸元に顔を寄せた。
大人しく背中と腰に手を落ち着かせた佳正さんは後でいいよと耳元にリップ音を鳴らしながらキスをしてきた。


「嬉しいよ、ありがとう」


寝起きの掠れた声が耳元で響いてくすぐったく、少し肩をすくませる。それに気を良くしたのかリップ音を鳴らしながら頬や首筋にキスを落とす佳正さん。


「もう早く寝てよ〜おめでとうって言いたかっただけだから」
「いいじゃん。幸せを噛み締めてるんだから」


ほんと幸せあったかい、と漏らしながら首元に顔を埋めてキュッと私を抱くその腕が愛おしくて、背中に回した手に力を込めた。

しばらくそうしているとお互いの体温が気持ちよくてウトウトとしてくるのが分かった。佳正さんはそれに気付いたのかトントンとゆっくりと背中を叩いてくれている。


「眠っていいよ、遅くまで起きててくれてありがとね」


そう言って瞼に落とされた唇を境に私の記憶は途切れ深い微睡みへと落ちていった。



それから何時間後に私に絡む腕からそろりと抜け出しプレゼントを渡すために寝ている佳正さんの上にダイブするのはまた別のお話。




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