Voice
□華火
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「佳正さん!佳正さん!」
「麻衣、走ったら危ないって言ってるだろ」
「走ってないですー」
ちょっぴりはしゃいだだけ、と笑う彼女は俺の隣へと舞い戻って、えへへと照れたようにまた笑った。
「私いちご飴食べたいです!佳正さんなに食べますか?」
そんな彼女の頬をやんわりと撫でてから滑るように手を絡め合ってその小さな手を引いた。横ではぴょんぴょんと跳ねるように歩きながら俺の顔を見る麻衣がいる。
「んー、たこ焼き食べたいなあ」
前方にチラリと見えたたこ焼きの夜店を指差すとにんまりと笑って麻衣は俺の手をキュッと握った。
人々が行き交う中を麻衣を庇うようにして歩く。手は繋いでるものの、時折後ろを振り返ってちゃんとついてきているか恋人の姿を確認する。そのたびににっこりと笑ってくれる麻衣に俺はドキドキしっぱなしだった。なんて言ったって今日の麻衣は別人かと思うくらいに可愛い。淡いピンクの花が麻衣を華やかに魅せる。浴衣と同じ花を頭に挿して、流れるような黒髪は上へとあげられてどこか妖艶だった。待ち合わせの場所に行ったときはホントに誰かと思った。
「花火がよく見えるところ行きましょう!」
お目当てのいちご飴とたこ焼きを手に俺の手をくいくいと引っ張る麻衣。俺が持つって言っても聞かないんだから。
「友達から穴場スポット教えてもらったんです」
麻衣はそう言うと花火始まっちゃう!と祭り会場に流れるアナウンスを聞いて飛び跳ねていた。
さっきと場所が逆転になった俺は麻衣に手を引かれて人混みを進んだ。ああ、前から人来て危ないのに。かと言っても2人並んで歩けるスペースは無くて、頭一個分下にある彼女の後頭部を見ながら歩いた。そこから伸びる真っ白なうなじとほつれ髪に目を奪われた。…頭からバスタオルを被っててほしい。