Voice
□好きだから
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こんにちわ。日本で声優をしている坂下麻衣です。まだまだだけど、ファンのみなさま、先輩の声優さんのおかげでお仕事も増えつつあります。
そんな嬉しい疲労が続く中、わたしは思っていることがあります。
「杉田さんって声優界一絡み辛いんですか?」
「…は?」
目の前で台本に目を通していた中村さんがきょとんと顔をあげた。
「わたし今アニメご一緒しててラジオもやらせていただいてるんですけど…」
わたしが話し始めると、見ていた台本をパタンと閉じてうんうん、と頷いてくれた。
「それを知ってる声優さん方が「絡み辛くない?」って口を揃えておっしゃるんです」
それを聞いて中村さんは、ははっと笑った。中村さんと杉田さんはとっても仲が良いと聞いたし!
どうですか?と意味合いも込めて首を傾ければ、中村さんも首を傾けてきた。
「坂下ちゃんはどう思う?」
…わたし?
思ってもいなかった返答に腕を組んだ。それを見て中村さんはまた、ははっと笑った。
「すごく優しい先輩です。フォローもしてくださいますし、いつも気にかけてくださいます。よくご飯も誘っていただきますし」
絡み辛いということは思ったことないです!と笑って言えば、は?とでも言うように身を乗り出してきた。
「ご飯?なにそれ。まじ?」
「え?…あ、はい」
いきなり食いついてきた中村さんに驚いていると、身体を後ろへと下げて椅子へずるりと座り込んだ。いやそれは…とかなんもかブツブツと言いながら額に手を当てていた。
…どうしたんだろう?
「…いや、あのね…?」
突然の行動に首を傾げていると、あははと乾いた笑いを漏らしながら身体を起こした。
「うん、なんというかね…」
「中村さん、坂下さん!スタジオに入ってくださーい!」
中村さんが意を決したように口を開いた直後、スタッフがスタジオから顔を出してスタジオ前の簡易休憩場にいたわたしたちを呼んだ。
「あー…行こうか」
助かった!と言わんばかりの顔で立ち上がってスタジオへと足早に入っていった。
「えっ!中村さん!何なんですか?!」
慌ててそのあとを追いながら、続きを聞こうとした。でも中村さんは知らん!の一点張りで。
…なんなの!!
(それは杉田が坂下ちゃんのこと好きだから、とか言いづれぇ!!)