『賢者の石』
□第9話 クィディッチ
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11月に入ると、とても寒くなり、朝に行う剣技の練習は、手がかじかみ過ぎてなかなか上手くいかなかった。
挌闘訓練はシャドーボクシングをするが、こちらも寒くて思うように体が動かない。
あの日以来通っている厨房で、フロッグにこのことを話すと、外側はドラゴンの皮で覆われ、内側はウサギの毛で敷き詰められたジャケットと手袋を渡された。
これらのおかげで寒さが解消され、練習がスムーズに進んだ。
クィディッチシーズンが到来したため、忙しさが格段に増した。
ついに、土曜日にはレグルスとハリーの初試合だ。
相手は………スリザリン。
最初の試合がグリフィンドールの因縁の相手とは思わなかった。
すでにレグルスは先行き不安であった。
チームの秘密兵器として『極秘』にハリーとレグルスは誰にも見られぬように練習してきたが、秘密というものは大抵知られているものだ。
すれ違いざまに頑張れよと、いろんな人にエールを貰うのは照れ臭いが嬉しいものである。
デビュー戦の前日、休み時間にフットウィリック先生に課題を提出し、中庭に出ている3人組を追いかけた。
3人を見つけて声をかけようとしたが、誰かと話をしていることに気づく。
セブルスだ。
セブルスはハリーから本を奪うと脚を引きずりながら去っていった。
脚の具合が心配だったが、後で聞こうと思い、ハリーたちへ駆け寄った。
「ハリー、ロン。どうした?そんな悔しそうな顔して」
「あ、レグルス聞いてよ!」
「スネイプが僕が借りてきた図書館の本を『郊外に持ち出してはならん』って言って取り上げたんだ」
しかめっ面になったハリーとロンに大変だったなと、レグルスは苦笑いした。
「それより、ハーマイオニー。その青い火は?」
「これ?持ち運びの出来る火よ。結構温かいの」
「へぇ〜それ俺にも教えて?」
「もちろん、いいわよ」
後でセブルスから本を奪おうと思いながら、柔らかな笑みを浮かべるハーマイオニーにレグルスは嬉しそうに目を細めた。
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