『賢者の石』
□第7話 真夜中の決闘
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「落ち着かない………」
自身の机に向かい魔法史のレポートと
書く手を止め、ひとりレグルスはため息をはく。
「(場所変えて勉強しよう)」
黒いシルクのパジャマに、黒いガウンを肩にかけ教材を手に持ち、杖をポケットに突っ込んでグリフィンドールの談話室に下りていった。
「(声………?誰かいるのか)」
今は11時半だったはず、この時間に誰がいるのだろう。
レグルスは不思議に思い、こっそりと階段から覗き見た。
「(ハリーとロン………それにハーマイオニーまで。何事だ?)」
肖像画の穴を乗り越え出ていった3人を少し呆然と見つめ、手にもった教材を近くの椅子に置いてレグルスもついていった。
穴から出ると、3人の他にもうひとりの人影が見えた。
「ネビル!」
『レグルス!?』
ネビルは嬉しそうに、他の3人はぎょっとしたようにレグルスを見た。
「ネビル大丈夫だったか?」
「レグルスのおかげで大丈夫だったよ!ありがとう」
「気にすんな。助けるって言ったからな」
ニカッと笑ってみせると、ネビルも笑顔でこたえた。
「で、お前らは?」
それからハリーたちに向き直りたずねる。
「決闘だよ。マルフォイとの」
「決闘?ドラコと?………騙されてるぞ、それ」
「私は止めたのよ!」
「それで一緒にきたら元も子もねぇだろ」
小さくバカと呟いてから、レグルスは肖像画を見た。
どうやら太った婦人はお出掛け中らしい。
「ここにいても、後から問い詰められるだけかな………俺もついていくよ」
不満げなハリーとロンを急かすとトロフィー室へと5人で向かった。
トロフィー室にはドラコもクラッブもゴイルもいなかった。
「怖じ気づいたんだよ」
「………もとから来る気なかったと思うぜ」
ロンのバカにしたような顔に、額に手を当てながらレグルスはポツリと言った。
隣の部屋から聞こえて来た物音に全員が構えるが、声を聞いた途端震え上がった。
ハリーの合図でフィルチの声とは反対の扉へ急いだ。
ネビルが曲がり角に消えたとたん、間一髪、フィルチがトロフィー室に入ってきた。
「どこかこのへんにいるぞ。隠れてるのかも知れない」
「こっちだ」
レグルスは4人に耳打ちした。鎧がたくさんある長い回路を慎重に歩き出す。
が、ネビルが恐怖のあまり突然悲鳴をあげ、つまづいてロンの腰に抱きつき、2人揃って鎧にぶつかって倒れこんだ。
城中を起こしてしまいそうな凄まじい音がした。
「「逃げろ!」」
ハリーとレグルスは同時に叫び、5人は回路を疾走した。
レグルスはこけかけたハーマイオニーの手を掴んで、引っ張って走った。
そこからはただやみくもに走りまくり、トロフィー室からだいぶ離れた「妖精の魔法」の教室近くに出てくると冷たい壁に寄りかかり、息を大きくはいた。
「レグルス………」
「なに?ハーマイオニー」
「手、離してくれない?」
「ああ、ごめん」
「いえ………ありがとう」
「ッ………どういたしまして」
恥ずかしそうにうつむくハーマイオニーから目を逸らし、レグルスは違う意味でまた大きく息をはいた。
「グリフィンドール塔に急いで戻らなくちゃ。できるだけ早く」
「そうだな、ロン。ハリー、ドラコに騙された……ってことだな。ったく、あいつは……一度話しねぇとな」
レグルスは教室から出てきた何かに頭を抱えた。
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