『賢者の石』

□第1話 届いた手紙
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ダンブルドアと先の話をしたあの夜から10年近くたった。グリモールド・プレイス12番地にあるブラック邸は以前に比べ陰湿な空気がなくなったような気がする。

そんなブラック邸の2階に彼らはいた。

レグルスは黒のストライプのスーツをビシッと着こなし、レギュラスは執事服を着てレグルスの傍らに立ってた。

「レグルス様、これで最後となります」

「ああ」

そう言って最後の書類仕事を終え、ふっと息をついた。



「つ・・・かれたーーー」

レグルスはキリッとした顔をふにゃりと歪ませ、深く椅子に座り込んだ。

「お疲れ様。休憩しようか?」

レギュラスも先程の態度とは違い真逆の柔らかな雰囲気が場に流れる。

「レギュラスおじさん〜俺紅茶ね!」

「はいはい。クリーチャーに頼もうね」

「よっしゃ!じゃアップルパイも!」

「まったく」

そんな話をしながら仕事部屋を出て1階のキッチンへと降りていく。

書類仕事といってもブラック家への他の貴族からの要望であったり、魔法省からの依頼――情報依頼――などである。
一番多いのは婚約請願書である。レグルス自身は「断るっ!俺の道は俺が決める」と全く相手にもしていない。
ブラック家の当主だから純血の相手が望ましいとレギュラス言うがレグルスは純血やマグルなど同じだという考えなので聞いていない。
レギュラスも最近はあの2人の子供だからと諦めている。



「クリーチャー紅茶とアップルパイすぐに用意できる?」

席に着きクリーチャーを呼び出しそう声をかける。

「もちろんでございます。レグルス様が昨日食べたいと言っていたので今日のティータイムようにご用意しております」

「流石クリーチャーだな!ありがとな」

「も、もったいなきお言葉でございます」

クリーチャーは主人からの感謝の言葉に目を潤ませながら、それを隠すようにそそくさと紅茶とアップルパイを取りに行った。

「じゃお茶にしようか」

「クリーチャーもどう?一緒にさ?」

「いえ……そのようなことは」

恐縮するクリーチャーにレグルスは笑顔で説得をはじめる。
レグルスにとってクリーチャーは家族同然だと思っているのでこのようなことはよくある。
その光景を見ながら母親とそっくりだといつもレギュラスは思う。
そしていつも小さくなりながらクリーチャーは折れるのだ。

「その……よろしいのですか」

「構わないよ」

「もちろんだよ。さ、お茶にしよう?」

こうしてブラック家のティータイムが始まるのだった。




「そういえば今日の午後からの予定を聞いてなかったね」

レギュラスはふと思い出したようにレグルスに問いかけた。

「フィッグおばさんの所に行こうかなって」

「……あっちに何の用事があるんだい?」

「マグル界の本って結構面白くて……買いに行こうかなと」

「マグル界のお金は用意しているのかい?」

「うん。セブルスが教えてくれて両替してきてもらったよ」

どうやってもレグルスはマグル界へ行くらしい。ここ最近よくマグル界へ行くから内心レギュラスは寂しさを感じる。
だが、いって聞く子じゃないのは分かりきったことである。
セブルスには薬草学をこっそり教えてもらったり、マグル界の道具の使い方を教えてもらったりしている。
何故マグル界のことを知りたいのかと聞いたら、「マグルやマグル生まれの友達が出来た時のために」ということらしい。
レギュラスはフルパウダーを持ち、暖炉の前に立つ甥の姿を見つめた。


「いってくるね」

「夕方にはスネイプ先輩来るからそれまでには帰ってくるんだよ」

「は〜い」

「いってらっしゃい」

暖炉脇にある蛇をモチーフにした銀のカップからキラキラした粉をひとつまみ取り出す。それを暖炉の炎に投げ込むとエメラルドの炎に変わった。

「アラベラ・フィッグ宅!」

エメラルドの炎に飛び込む同時にそう叫びレグルスは消えた。

そんなレグルスの後ろ姿を見つめてレギュラスはそっと息をはいた。

「もう11歳になったのか」

そしてゆっくりと目を閉じた。






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