オリジナル・単発もの

□愛しき爆弾 ※
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★交わらない運命★




 怜は私の従兄妹で、年上で、かっこいいし、ミステリアスだし、根は冷たくてまじめで、結構わがままで、理想も高くて、それでいて自分のお兄ちゃんが大好きな癖に、嫉妬して、自分と比べてすぐ競争したりする。

 お兄ちゃんにはかなわない、負けるって分かってるのに、懲りない男だ。

 負けて悔しがって、ブラコン・・・コンプレックスの塊なんだろうね。

 好きで好きで、好き過ぎちゃうから憎いみたいな。そんな彼だから、魅力的なのかな?

 大好きなんだよ。どうしようもなく。





 私の理想。

 だからいつも心に引っかかっている。

 どんなに愛している人がいても、棘みたいにチクチク。

 霧みたいにモヤモヤ。

 置き火みたいにコトコト。

 取れない染みみたいにジワジワ。






 忘れられない?

 忘れたくない?





 ずっと追いかけていたい?

 振り向いてほしい?心がほしい・・・






 どこまでも終わりが無くて、行き着けない、ゴールがない。

 手出しできない、ほしいのにもらえない。

 どうしようもない。

 従兄妹だから会えた。

 従兄妹だから話せる。

 従兄妹だから・・・本当の彼を知らない。






 いったい出口はどこなんだろうね?

 出たいけど出たくない。

 出口を探している、不真面目に。





 私には私の道があって、彼には彼の道がある。

 どんなに頑張っても、交わらない道は、どんなに近づいても別の道。

 わき道、抜け道ありませんか?

 教えてはもらえませんか?





 答えは私の中。

 見えているけど、気づかぬ振りで知らん振り。

 だってほしい答えじゃないから。

 私は何がほしいのか、彼に言ったらきっとあっという間に終わるもの。

 そんな関係だから、このまま夢で終わるのがいいのですよ。

 わかっているから。





 どんなにいい夢見ても、夢でしかなくて、夢はやっぱり現実とは交わらなくて「もしも」も「かもしれない」も「だったらいいな」も「あるいは」も全部「ありえないこと」。

 夢見るための道具でしかないから。





 本当に起こったらどうなるんだろうね?

 大好きだけど、思いっきり困るのかな?

 現実見えなくなるほど喜ぶのかな?

 どっちにしても最後にやってくる後悔は大きそう。

 後の祭り、後悔したときにはもうお終い。






 いい夢はやっぱり夢なんだよね。

 現実では・・・現実だからこそ、起こりえないこともあって。









 大好きだから、にくったらしい。

 私は彼をそう思う。

 どんな失態を見せ付けられても、なぜか許せるのに、私の遠いところで味わっているだろう幸せを取りあげてしまいたくもなる。

 悲しんでいる彼を、救ってあげる人になりたいから。

 へこんだときに私のところにおいでって。
 





 いつまで子ども扱いされるのかな?

 もうとっくに卒業してる?

 だからこそ他人?

 従兄妹だから他人?

 従兄妹だから身内?

 壊れない関係は無いから、とっとと壊してしまえればいい。






 でももったいなくて、失いたくなくて、しがらみのような関係にしがみついている私は、なんて未練タラしいんだろう。いい加減イヤになるよ。

 でもどうしようもないこの気持ちが、いつまでもいつまでも心臓にくすぶっていて、消すことが不可能と思えるくらいしつこいんだよ。

 変とわかっていても、この思いは消えないから。

 いっそこの思いを全部暴露してしまいたいと思う。

 でも現実っていう壁はやたら高くて、バベルの塔より高いくせに、神の怒りには触れないものなんだよね。

 壊れることは無い。

 壊れないように、理性?倫理?常識?っていう神がずっと守ってくれている。

 そのおかげで今があるなら、やっぱり神には感謝なのかな。

 この関係が続く限り、そう簡単に怜を失うことは無いのだから。






 あぁ、ばかな私。

 底なし沼から抜けだす手段はそう簡単には見つかりません。

 そのくせ自ら進んではまり込んでいるふしもあり・・・






 早くこっちの世界に戻っておいでって、神の声に耳を塞ぎ、いつまでも夢の中をさまようのは、苦しいのに幸せだったりして、麻薬のような効力は、夢という禁断症状を見せて、いつまでもこちら側に引き止めてくれる。

 好きって気持ちを消させないように。

 それでも私は真綿のように柔らかく締め付けてくるこの思いを捨てられない。いつか本当に現実になってほしいって言う破滅を抱えながら・・・





 破滅ってのは大きな音を伴うこともあるし、徐々に崩れ去ることもある。派手なら目立つし地味なら目立たない。

 予兆がある場合もあれば、突然やってくることもある。

 大きな破滅に小さな破滅。

 影響がすごいこともあれば、大して気にならないものもある。

 立ち直れる場合に立ち直れない場合。

 感じ方もさまざまで、ある人にはなんでもない出来事かもしれないけど、ある人にとっては命まで崩れてしまうような出来事かもしれない。






 決して口にはしないし、態度にも出さないけれど、心はいつも同じほうに流されている。

 とめようと試みたこともあったかもしれないけど、今はそんな気遣いも無い。

 大好きって気持ちは変えられないし、今のこの状況も変わらない。







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