オリジナル・シリーズ 『余韻』
□Jealousy (※)
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親友のリン子、紀香とは今でも関係は変わらず続いている。
賑やかで活発なリン子は隣町に一人で暮らしているし、冷静でクールな紀香はなんと、高校から付き合っていた彼と今年めでたくゴールイン・・・そう結婚した。
名前も「河浦さん」から「内村さん」に変わった。
早いんじゃない?なんてリン子は言っていたけど、付き合いが長いからタイミングを逃すと絶対結婚できないと紀香は笑っていた。
紀香の結婚式はとっても厳かで、しかも親友の結婚式ということで、私もリン子も嬉しくて号泣してしまった。
今日は月に一回の食事会。
忙しくてもお互いの近況報告を兼ねたこの食事会という名の飲み会は外せない行事となっている。
今回私は・・・・そう、初めてできた彼氏を二人に報告する、という大きなノルマがあった。
暇さへあればメールしたり電話しあったりしている仲なのに、こういう報告はやっぱり本人たちを目の前にした方がいいかなと思って、付き合いだして既に2週間がたってしまったけど、まだ内緒状態だった。
前回の飲み会ではこんなことになるなんて思っていなかったし、そもそも派遣先で「楠原蓮」に再会するなんて考えられなかったから。
私の彼氏、楠原蓮は3つ年上で、容姿端麗、冷静沈着、頭脳明晰、みんなから慕われ、頼られるし、なによりとってもモテる。
でもそれは昔からで・・・・
私と蓮の出会いはずっと前の・・・私が中2、蓮が高2のとき。帰宅のために使うバスで出会った。
私はバスの定期をなくしたと思い込み(家に帰ってよくよく探したらバッグの中にちゃんと入っていた!)泣きそうになっていたところ突然『中坊!』と呼ばれそちらを見ると、なんとたまたま乗り合わせた蓮が500円玉を私に投げてよこした。
ビックリしている私を見ながら勝気で無邪気な笑顔を浮かべていていた蓮・・・・心が奪われた。
『お礼は体でお願いね♪』
そんなおどけた態度をとりながらも瞳は優しくて・・・・
初恋。
中2でなんて遅いくらいで、そのせいかやたら無謀な行動に出てしまい・・・彼の高校の文化祭にリン子、紀香を引き連れて私はまさしく乗り込んでいった。
たまたまリン子に見せてもらった雑誌の星占いに『運命の出会いかもしれません。運命を信じてチャンスと思ったら行動することです』なんて書いてあったから、真に受けて・・・・
結果は・・・・酷いものだった。
『キモイから、消えて。ウザい』
そう言われ、私はショックで立ち直れなかった。
もう二度と恋なんかしないと、心を閉ざしてしまうほど・・・・・
あれから恋らしい恋もせず、臆病なまま心を閉ざして・・・気づけばもう24歳。すっかり大人・・・へたをすればおばさんの仲間入りで。
そんなとき派遣された出版会社で・・・・「運命」の再会をしてしまった。
私はあまりの驚きと動揺で心臓が止まるかと思った。
だってそこには最低最悪の運命の人・・・・私から恋する気持ちを奪った蓮がいたから。
蓮は私の仕事の直属の上司というポジションで、毎日が拷問のようだった。
忘れたくても忘れられない心の傷を、もっと深くえぐるようで・・・
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