Morning Glory(サンジ)
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その時の私は仕事も無ければその日寝る部屋さえなくて、けして明けない闇の中にいるように暗澹たる気持ちで港町を当てもなく歩いていた。
持っていたのは当座の着替えと少しばかりのお金が入ったトランクひとつ。
先月まで務めていたお屋敷は火事で焼けて、ご主人様も亡くなった。
そこで働いていた者たちは実家に帰ったり新たな職場を見つけたりと散り散りになってしまった。
「さて、どうしようかな…。」
治安があんまり良くないこの島では紹介状が無ければ住み込みの仕事もなかなかもらえない。天涯孤独の私には帰る実家もない。
飛び込みで数件仕事がもらえないか尋ねてみたけれど、色良い返事はもらえなかった。
今日のところは諦めて宿を探さなくちゃと路地を出たところで、港の外れに停泊する船を見つけた。
「海賊船か…街が荒らされなきゃいいけど。」
眉間にシワを寄せて私はマストにはためく海賊旗を見やった。
お屋敷が焼けたのも海賊が押し入って来たから。学も躾もなっちゃいなかった孤児の私に一人で生きて行くだけの術を教えてくれた、優しいご主人様を殺して全て奪って行った。
私は帽子をかぶり直し、ため息をついて歩き出した。
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