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□真夏のクリスマス(サンジ)
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順調な航海を続けるサニー号。
次は夏島らしく、照りつける太陽がジリジリと厳しくなってきた。
「クリスマスに夏島なんてついてないわねー。」
船首で進路を見ながらナミさんがボヤいた。
私がいた島は秋島だったから夏島なんてちょっと楽しみだったけれど。
「クリスマスと言えば雪よ雪!
真夏のビーチにクリスマスツリーなんて風情がないわ!」
「そういうものですか?」
ふぅんと思いながら聞いていたらロビンさんが笑いながら話に加わってきた。
「仕方がないわ航海士さん。
夏島のクリスマスを楽しみにしましょう?」
「はーっ。それもそうね。」
「レディたちー!おやつができましたよぉ〜っ!」
女三人で笑っていたらやって来たのは愛しのコックさん。おやつと聞いて船首からデッキのテーブルへ向かった。
「あら何これ。」
「クリスマスツリーね?」
「綺麗!」
テーブルに並べられたのはクラッシュしたミルクプリンの上にふんわり盛り付けられたかき氷。
グリーンのシロップがかけられ、ところどころ赤や黄色のゼリーがのぞいていた。
「ミントリキュールベースのシロップとフルーツゼリーでクリスマスツリーを作ってみたよ。
仕上げはこいつだ。」
私たちの反応に嬉しそうに笑いながらサンジはツリーの上からトロリと練乳をかけた。
「雪みたい!やるわねサンジくん!」
「本当。素敵だわ。」
「お褒めにあずかり幸せですぅ〜っ!」
大喜びでナミさんとロビンさんはかき氷を口に運んだ。飛び交う賞賛にデレデレしてから、サンジがふと私の方を見た。
「…お口に合わなかったかい?プリンセス。」
「あ、ごめんなさい。
違うの、何だか食べてしまうのがもったいなくて。」
暑い日差しの中でキラキラする氷のツリーは本当に綺麗だったから、スプーンを差してしまうのがもったいなかったのだ。
私がそう言うとサンジはふっと笑った後で私からスプーンを取り上げ、テーブルの横にひざまずいた。
「気持ちは嬉しいが溶けちまわないうちに食ってもらった方が幸せなんだぜ。
優しいプリンセスにサンタからのプレゼント、はい、あーん。」
そう言ってためらいなくスプーンを差して一口掬うと、私の口元に運んだ。
「えっ、サンジ!?」
「今はサンジじゃなくてサンタ。
あーん。」
両隣でナミさんとロビンさんが、早く食べちゃいなさいと笑っている。
恥ずかしくて仕方なかったが、御構い無しににこにこしているサンジの顔が絶対やめてくれないだろう事を物語っていたから、私は渋々口を開けた。
「…美味しい。」
「だろ?ほらもう一口、あーーー…。」
「だっ大丈夫、自分でいただきますっ!」
「そう言わないで。今日はおれキミのサンタになったから。
ぜぇんぶ食べさせてあげるよぉ〜。はい、あーん。」
「あーっ!もう鬱陶しいわあんたたちーっ!!」
ごちゃごちゃやっていたらナミさんに怒られた。ロビンさんは面白そうに笑っている。
熱くなる頬にひんやりしたミントリキュールの香りが爽やかに抜けていった。
→あとがき