それは甘い20題
□10.ひざまくら
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午後10時。
私はラウンジのソファに座って本を読みながら、いつものようにサンジが明日の仕込みを終えるのを待っていた。
ロビンさんに借りたその本は私が住んでいた島の御伽噺を集めたものらしく、昔奥様に聞かせてもらったお話もたくさん入っていて、私はすっかり読書に夢中になっていた。
「何読んでんだい?」
不意に降ってきた声とかぐわしい香り。ハッとして顔を上げるとサンジがニコッと笑って私の隣に座った。
「もうお終い?」
「ああ。待っててくれてありがとう。
お茶をどうぞ?」
「ありがとう。」
本を脇に置いて私はローテーブルに置かれたカップを手の中に収めた。そっと飲み下すと、私の身体は温かさと甘酸っぱい香気に満たされた。
「美味しい。いい香りね。」
「読書好きのプリンセスにブルーベリーティーですよ。目にいいんだとさ。
で?おれの事見向きもしないで何を一生懸命読んでたんだい?」
お茶の感想を言うとサンジはニッと笑ってから私の肩を抱き寄せ、傍に置いた本に手を伸ばした。
「御伽噺?」
「そう。小さい頃、奥様に聞かせてもらったのが入ってるの。」
「そっか。」
サンジは私の肩から腕を回したまま、本のページをパラパラめくった。頬と頬がくっついて何だかこそばゆい。
「じゃあ、おれにも聞かせて?」
私の頬にちゅっとひとつキスをしてから、サンジはにっこり笑って私に本を渡してきた。
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