それは甘い20題
□03.指先
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私の指に巻かれた小さな絆創膏に気付かれたのは夕食の片付けをしていた時だった。
洗い上がった皿を渡しながら視線を落とし、サンジさんは眉を顰めた。
「あれ、リリスちゃんそれどうした?」
「え?ああ、ささくれになっちゃって。夕方チョッパーに絆創膏もらいました。
たいしたことない…。」
「リリスちゃんの玉のお肌にささくれが!?ああああ、ここはいいから座っててくれ!」
私の話を遮ってサンジさんは大声を上げると私をキッチンの椅子に座らせた。
そして自分は私の前に跪いて絆創膏の巻かれた右手を取った。
「あの、大丈夫ですよ?最近ほら、冬島が近いせいかちょっと寒くなってきてるから…。」
「おれとしたことが、リリスちゃんの痛みに気付かないなんて!
他の指は大丈夫かい?」
本気ですまながっているサンジさんに何だかくすぐったい気持ちになって、私は取られた手にもう片方の手を重ねて彼の手を握った。
「ありがとうサンジさん。本当に大丈夫だから、心配しないで?
この船に乗ってからずい分手荒れしなくなったの。サンジさんのお料理のおかげかしら。」
「リリスちゃん。」
事実、水仕事は相変わらずなのにお屋敷で働いていた頃よりも手が荒れなくなっていた。
私がそう告げると心配性の恋人はちょっと照れたようにほんのり頬を染めて笑った。
「そいつは光栄だが…ちゃんとチョッパーから薬はもらったかい?」
「ささくれくらいで薬はいらないですよ。
あと、これを塗るから大丈夫。」
私はエプロンのポケットを探って小さなチューブを出した。
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