それは甘い20題
□03.指先
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翌朝私が甲板で洗濯物を干していると、チョッパーがトコトコとやって来た。ふんふんと鼻を鳴らしている。
「どうしたのチョッパー?」
「おうリリス。なんかいい匂いするな、何だ?」
「あ、コレ?」
ポケットからハンドクリームを出して見せると、チョッパーはまた鼻をすんすんしてから二カッと笑った。
「コレかー!さっきサンジからもおんなじ匂いしたぞ!」
「うん、朝ごはんの片付けの後でサンジさんにも塗ってあげたからね。
チョッパーにも塗ってあげる?」
「おれはいいけど見せてもらっていいか?」
私はチョッパーの小さな蹄の上にチューブを乗せてあげた。
興味深そうにチューブを見ていたチョッパーの手から、フッとチューブが消えた。
「何だ?食いもんか?」
「あーっ!ルフィ、ダメだぞ!それはリリスの…。」
「リリス?そういやさっきサンジからもこの匂いしたな。
やっぱ食いもんだろ!食わせろ!」
「違いますよルフィさん。
はい、ルフィさんにも塗ってあげる。手を出して?」
「手?こうか?」
「はい、クルクル〜。」
「あひゃひゃひゃひゃ!くすぐってぇよリリス!」
不思議そうに手を出すルフィさんにもクリームを塗ってあげていると、いつの間にかウソップさんやナミさんたちも集まって来ていた。
「へえー、ハンドマッサージ?私にもやってやって!」
「いいですよ。ウソップさんもやります?」
「お、おれは……やっぱやってもらおっかなー…。」
「そうだ!おっもしれーからみんなやってもらえーっ!」
私はルフィさんに手を引かれて、甲板にいたクルー皆にクリームを塗って回った。
「リリスちゅわ〜ん!昼の片付け終わったから、またマッサージを…。」
「ごめんなさいサンジさん、もうなくなっちゃったの。午前中、みんなに塗ってあげたから…。」
私が空のチューブを見せて謝ると、サンジさんはポカンとした後で盛大にガッカリした。
「そうか…道理で昼飯の時にやたらいい匂いがしたと思ったら…はあ…。」
「ごめんなさい。今度島に着いたら一緒に買いに行きましょう?」
「リリスちゅわんデートのお誘いかい!?もっちろん喜んでぇ〜!」
目をハートにしてサンジさんは私を抱き締めた。その日一日サニー号は薔薇の香りに包まれていた。
→あとがき