それは甘い20題
□03.指先
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サンジさんの大きな手の上に右手を重ねる。その手の甲にクリームを乗せると、彼は黙ったまま、私がしたみたいにクリームを塗り込みながらマッサージを始めた。
私は沈黙に少々居心地悪さを感じながら手元を見ていた。ゆっくりと滑るサンジさんの指先が私の指を撫で下ろした時、くすぐったさにピクンと身体が震えた。
サンジさんは目線だけこちらに向けて再び指を滑らせる。その動きはマッサージと言うには酷く緩慢で優しくて、サンジさんに上目遣いで見つめられながら私は頬に熱が集まるのを感じた。
「どうしたのリリスちゃん。顔が赤ぇけど?」
「な、何でもないです。ありがとうございました、もう…。」
「まだ終わりじゃねぇけど。」
表情を変えずに聞いてくるサンジさんに恥ずかしくなって私は立ち上がって手を引っ込めようとしたが、引こうとした手はがっちりと掴まれて離せなかった。
「だぁめ。ちゃんと最後までやってあげるから。」
愉快そうに目を細めて口角を上げるサンジさんに、私はもう逆らうことができなかった。
上げかけた腰をストンと椅子に降ろすと、サンジさんは満足そうに手を動かし始めた。
やがてその手は絆創膏の巻いてある指に到達した。水仕事で緩んでいた絆創膏は、サンジさんの指の動きでするんと落ちてしまった。
「あぁ本当だ。痛そうだな。」
「…っ!」
サンジさんはその小さな傷口に気が付くと、スッと手を持ち上げて口付けた。指の腹をチロッと舐められてびっくりして手を引こうとしたら、逆にグッと引き寄せられてしまった。
「サ、サンジさん…もう、終わった…。」
「まだだよリリスちゃん。」
「もう十分…ぅんっ…!」
抱き寄せられてサンジさんの手が私の身体をなぞる。
抗議の声は口付けに塞がれ、ささやかな抵抗はやすやすと抑えられてしまった。
そのまま、私は真夜中までサンジさんの指先に翻弄され続けた。
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