初恋

□10.デート〜前編〜
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『恋愛モードを高めて、ユウにフェイタンを意識させる!
そして、一気に2人の距離を縮めよう』

シャルナークの恋の指南通りに映画館へと向かったフェイタンとユウ。
いざデートで上手く会話が出来なくても、映画なら大丈夫だろうというシャルナークの気遣いもあった。

「うわ、やっぱ凄い人だねー」
「一番人気らしいね」
いま大ヒット中の恋愛映画。
映画館から出てきたばかりの恋人達が目に涙を浮かべながら、感動の余韻に浸っていた。

どのカップルも腕を絡め合って、うっとりとした眼差し。
上映後も自分たちもあんな雰囲気になれるかもしれないと、映画の内容そっちのけで妄想してしまう。

「フェイ、コーラとポップコーン買ってくるね」
そう言ったユウの声に現実に戻される。



やや後ろ寄り真ん中の席で悪くない。
ユウは予告が始まると、何本めかで「次コレ観たいね」とフェイタンの耳元で囁いた。
次…という言葉がフェイタンに甘く響く。

上映が開始してユウが話すことを止めて、ただスクリーンを見つめる。
そんなユウをフェイタンは時折横目で見つめていた。


上映時間3時間の大作。
映画は徐々に盛り上げを見せながら進んでいく。



………

「……様……ます」

………

「お客様!ご退席願います!」
スタッフの男性は、困った様子で2人に声をかけていた。

「ん…映画は…」
いつもより、さらに目つきを悪くしたフェイタンがボソボソと呟く。
隣でユウも、寝ぼけまなこをこすっている。

「先ほど終了致しました。
次のお客様がいらっしゃいますので、ご退席下さい」


いつの間にか眠ってしまっていた。
外に出れば、太陽の光が眩しくて仕方ない。
寝起きの2人はひどいしかめっ面で、とても恋愛映画を観たあととは思えない。

「私、船の先端でヒロインが飛んでるーってトコまでしか覚えてない…」
ユウが寝起きのせいで、やや低い声をして言った。
「…ヒロインが裸で絵のモデルやてるとこまで覚えてるね。ワタシの勝ちよ」
「勝ち負けじゃないよー。
てか、どんな展開なのそれ…」

歩きながら、ぼんやりした頭がだんだん目覚めてきた。
「退屈だたか?」
「ってわけでも無いけど、恋愛映画って柄じゃなかったよね、私達」
少し困ったようにユウが笑う。

ユウを楽しませてあげられてないね…
フェイタンの心に不安がつのる。
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