初恋

□09.誘う
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それから数日後。

ここ何日かはずっと雨が続いていた。
けれど雨の日はユウが長い時間、自分の部屋で読書をする。
フェイタンにとって雨は大歓迎だった。

だが、今日は読書どころでは無い。
ユウをデートに誘うというミッションを遂行する予定のフェイタン。


……本の内容なんて、頭に入てこないね。
なかなかユウに誘いを切り出せずに、パラパラとめくるページばかりが増えていく。
横目でユウの方を見やれば、その視線は読んでいる本にばかり注がれて。

こちの気も知らないで…
無意識にため息が漏れてしまった。

「その本やっぱ合わなかった?」
突然ユウがフェイタンに視線を移して、残念そうに聞いてきた。
フェイタンのため息が聞こえたのだろう。

「ハ?」
顔近いね…!!
いきなりの質問と、覗き込むように向けられた顔に頭が回らなかった。

それ。
とユウが指さす。
その先にはフェイタンの手にあるユウがあげた恋愛小説。
ようやく質問の意図を理解する。

「ああ…コレか。
思てたより面白いね」
慣れないジャンルに戸惑ったが、意外と読めなくはなかった。

自分が恋を知ってからは、色々なことに感情を揺さぶられる。
この本も例外ではなく、ついつい登場人物の心情に自分を重ねたりしてしまう。

「そっかぁー、良かった!」
ユウが嬉しそうでフェイタンの表情も緩みそうになる。
…が、当初の目的を思い出す。

なんて切り出したらいいか…。
フェイタンは心の中で頭を抱える。
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