short

□ヒミツの気持ち
2ページ/6ページ

食器を洗いながら、それにしても凄い量を食べる人たちだと思う。
と言っても、そのほとんどはウボォーとフランクリンの胃の中に入っているのだけれど。

そんなことを考えて、ぼんやりとしていたのがいけなかった。
「っ!…痛」
傷口は深くはないが、包丁の先が当たった指先からは血が流れている。

何も考えずに、指を口元へ運ぼうとした。
すると突然手首を掴まれたかと思ったら、指先に暖かく柔らかい感覚がした。

「大丈夫か?」
若干かがんだ体勢で私を上目遣いで見ながら、フェイタンが傷のついた指先をしゃぶるように舐めていた。

「フェイタンっ!…離して」
「まだ駄目よ。血が出てるね」
そう言って、吸いつく唇は止めない。
指先を通して伝わる、フェイタンの舌先の感触が生々しくて恥ずかしくなる。

しばらくして、チュッと音を立てて指先は解放された。
思わず、手を背中の後ろに回してフェイタンから隠した。

「もう、なんでこんな事ばっかりするの!!」
フェイタンがこんな風にしてくるのは一度や二度ではない。
風邪気味で寒いと言えば抱きついてきたり、水仕事で手が荒れたときはずっと手を握られたり。

「気に入たて言たはずよ」
私がフェイタンの意図を理解していないことに不機嫌になったのか、眉間にシワを寄せたその表情は険しい。

「気に入ったって何なのもうー…」
私はがっくりと肩を落として、脱力した。
その言葉にフェイタンの眉がピクリと動いた。


フェイタンは私に距離をつめて、にじり寄ってきた。
思わず後ずさりしたものの、すぐにシンクに背中がぶつかって逃げ場は無くなった。

「言て分からないなら…」
そう言いながらフェイタンが私に手を伸ばしてきた。
と同時にゴスッと鈍い音がしてフェイタンの体が揺れた。


「何するね!?」
激しく殴られたであろう後頭部を押さえてフェイタンは怒りあらわに振り向いた。

「セクハラしてんじゃないよ。
いい加減にしな!!」
怒りの鉄拳を振り上げたマチが凄い形相で立っていた。

「マチ!!」
救世主登場。
すぐさま、マチの方へとすり抜ける。
とてもじゃないけど力ずくで来られたらフェイタンにかなうわけがない。



チッと舌打ちしてフェイタンは自室へと戻っていった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ