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□曼珠沙華
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「あ・・ありがとうございます!!」
一瞬で目の前で起きた出来事に、少女は目を丸くしながらも、感謝の言葉を述べる。

「別に・・この男が五月蝿かただけね」
急所を峰打ちにされて呻いている男を足蹴にした。

普段だったら殺していただろうが、仕事の依頼先でトラブルはさすがに厄介だと考えていた。


「貴方フェイタンですよね?
私はユウです」
少女は名乗ってもいないフェイタンのことを知っていた。

「・・・なんで知てるか?」
探るように少女を睨む。

「夢でみました。
貴方が私を隣村まで送ってくれることも知っています」
そう言って、この村の雰囲気とは不釣合いな柔らかな笑顔を見せた。

だたら、コイツが村の要人か?
こんな娘が・・。

そして夢というのは・・?





少女はそれ以上は語らず、フェイタンを村長のところまで連れて行った。


通された物々しい雰囲気の部屋で、フェイタンは村長と2人で今回の仕事の説明を受けていた。

「予知夢・・」
聞いたことはあるが、そんな事が出来る人間が実際にいるのか。


「あの娘はこの村の宝なのだよ」
その言葉には、今までユウを幾度となく政治利用してきたことが、容易に汲み取れた。

「それを何故、他の村に連れてくか?」

「隣の村は土壌も良く、経済も発展しておる。
ユウを隣村の村長の息子に輿入れさせれば、この村への支援を約束してくれた」


「要は政略結婚ね」

聞こえの悪い言葉をはっきり言うフェイタンに、村長は口をつぐむ。

輿入れは準備期間を要して1週間後。
それまではフェイタンはこの村に滞在することになった。
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