初恋
□10.デート〜後編〜
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空は薄暗くなり始め、茜色へと変化していった。
人の流れが駅へと向かいだし、1日の終わりを感じさせる。
楽しい時間というものは、あっという間に過ぎていく。
「どうしよっか、そろそろアジトに戻る?」
ユウも、やや名残惜しそうな表情をしながらも今日という日を満喫したようだった。
「そだな」
フェイタンとしては、まだ2人きりでいたい。
こんなチャンスをまた作れるか、自信も無かった。
かと言って、ユウをうまく引き止められる言葉が出てくる程、経験豊富なわけでもない。
今日は帰るしかないね…。
そう思って、岐路へと足を進めたときだった。
「ユウ」
「ん?」
「連れて行きたいところがあるね」
自分でもよく気づいたと思う。
これなら、ユウを絶対に喜ばせられる。
思わず、緩みそうになる表情。
ユウの反応を想像すると、胸の奥がじわりと熱くなる。
並んで歩く足取りも、無意識に軽いものになっていた。
「ここね」
「こんなお店あったんだぁ…」
ユウの少し高くなった声は、期待していることを感じさせた。