初恋

□10.デート〜前編〜
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本日は快晴。

待ち合わせは午前10時。
ヨークシンにある大時計の前。
大きなビルの壁にもたれかかる。


早く着きすぎたね…。
5分前行動など頭にないフェイタンが、約束の20分前には到着していた。
ユウはまだ来ていない。

辺りを見渡すと待ち合わせをしている男女だらけ。
ユウに似た背格好の女性が通る度に、緊張が走る。




フェイタンは大時計を見上げて時刻を確認する。
もうすぐ約束の時間。

柄にもなく、そわそわと落ち着きを無くしてしまう。

ユウから連絡があるかもしれないと、デニムのポケットから携帯を取り出した。
画面には着信もメールも無し。


すると携帯画面の上部から、影が差しこんできた。

「待った?」
その声に反射的に顔を上げると、目の前にはユウ。
近すぎる顔に驚いて、反応が一瞬遅れた。

「いま来たばかりね」
結構待っていたことは口が裂けても言えない。

落ちついてユウを見ると、見慣れない姿に目を奪われる。
「やっぱ、似合わないかな…?」
照れくさそうに聞いてくる表情も、いつもより艶めいて見えた。

普段ユウはパンツスタイルが多かったが、今日は短めのワンピース。
足元のカジュアルなショートブーツが、ユウの脚のラインを引き立てていた。

「…別に似合わなくは無いね」
目をそらしてユウに伝える。
今日はあいにく顔を隠すマスクも無い。

「そっか、良かった!
なんか出がけに、シャルがスカートがいいなんて言ってくるから慌てて着替えちゃった。
ギリギリになってごめんね」
申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせる。

シャルのやつ余計なことを…と思ったが、普段見れないユウの姿に否が応でもデートの期待が高まる。


凄く似合ってるよ。
思わず見惚れちゃったよ。
シャルナークあたりなら、そんな言葉を簡単にかけられただろう。

フェイタンは素直に褒めてあげられない自分を恨めしく思った。


「じゃあどこ行こっか?」
ユウがスカートの裾をひらりとひるがえす。
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