初恋
□01.意識
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いつからだろうか
本当は、もう、ずっとずっと前から…
旅団としての仕事の無い日。
フェイタンはいつものように部屋にこもって、読書をしていた。
13時30分過ぎの、気怠い昼下がり。
もう、そろそろだ。
ほら、足音が聞こえてきた。
誰かなんて、ドアを開ける前から分かってる。
無遠慮にドアが開けられ
「フェイタンいるー!?」
……ほら、やぱりコイツね。
「ユウ、ノクくらいするね」
わざと、眉間に皺を寄せてみる。
「えへへ〜、本貸して♪」
ごめんねの代わりに、小首をかしげてお願いをする。
去年、新しく旅団のメンバーになったユウ。
長くサラサラの髪に、人形のように整った顔立ち。
だが、サバサバとした性格で親しみやすく、すぐに旅団にも溶け込んだ。
明るく、人懐っこい性格は、幻影旅団の世間のイメージとはかけ離れたものだろう。
よくしゃべるヤツね、とフェイタンは思っていた。
だが、ユウには読書家という意外な一面があった。
なので、クロロやフェイタンとは、その手の会話で盛り上がったりもする。
ここ最近は、膨大に本を所有しているフェイタンの部屋に毎日入り浸っていた。
フェイタンの部屋を“私の図書館”などと呼んでいた。
「自分の部屋に持て行くか?」
ユウは、自分の部屋で読むときと、フェイタンの部屋で読むときとがある。
「ん〜……
今日ウボォーが仕事ないからなぁー。
ここで読んでいい??」
ユウの隣の部屋はウボォーだが、仕事が無い日はうるさくて読書に集中出来ないらしい。
「静かにしてたら、かまわないね」
ユウは読書に集中すると、全く
話もせずにのめり込む。
なので、静かなのは分かりきっているが、部屋の主として告げる。
「ん〜よし!!今日はコレ♪」
数年前に起きた事件を題材にしたノンフィクションもの。
パラ……パラ……とページをめくる音だけが、心地良く鳴り響く。
静かな、穏やかな午後。