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□ヒミツの気持ち
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念能力も使えない。
優れた知識があるわけでもない。
ずば抜けた運動神経があるわけでもない。

そんな私が恐るべき幻影旅団に招かれた理由は、ただ一つ。

「ユウおかわりくれー!!」
ウボォーの叫ぶような呼び声に慌てて、食事をしていた手を止める。


うまいものを食べたい。でも作るのはもちろん、わざわざ盗みに行くのも面倒だ。
ということで私は、とある料理店で働いているところから連れ去られた。
それからというもの、私は幻影旅団の胃袋を預かっている。
始めは恐ろしくて泣きそうになったが、意外にも仲間として認めてくれればみんな気が優しく、居心地が良くなっていた。

「はーい、じゃついでくるね」
ウボォーから、器を受け取ろうとしたとき。

ヒュッと私とウボォーの間を鋭く尖ったナイフが凄い早さで横切った。
今のは、どう見てもウボォーの手を狙ったような…。
投げられたナイフはギリギリのところでウボォーを避け、テーブルにささってしなやかに揺れている。
「…おかわりくらい、自分で取てくるね」
不機嫌オーラを纏いながら、ウボォーを睨みつけるのはフェイタン。
「うるせえヤツだな」
そう言って渋々動いたウボォーは、おかずの入った鍋ごと持ってきて、豪快に食べ出した。

「ユウ、ウボォーに触られてないか?」
「…その前にフェイタンが制止しましたから」
「だたらいいね」
そう言うなりフェイタンは平然とおかずを口に運びだした。

最近はこれが日常化して、他の団員達は顔を向けることもなく食事を取っている。



そもそも初めてここへ来た日から、フェイタンのジロジロと刺すような目線に歓迎されていないのかと思った。
けれど、その夜に不敵な笑みを浮かべて
「ユウのこと気に入たね」
とだけ伝えられた。
嫌われていたんわけでは無かったんだと安堵したのもつかの間。

それ以来、何かにつけては側に寄ってきて、男性団員が触れそうになると何としてでも阻止してくる。
なのにフェイタンは私に不自然なくらいボディタッチが多い…気がする。
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