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□キミとセカイ
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「ずっと待ってるから」
泣いたことのないユウが、笑いながら一度だけ泣いた。

目を閉じれば昨日のことのように思い出せる。




初めて会ったのは、瓦礫まみれの薄暗いアジトだった。
「クロロ、そのチビ何?」
「アジトの近くで泣いてたから、連れてきた」
クロロと呼ばれるその人に連れられてやってきた場所には、他にも何人か仲間がいた。

「ふーん、じゃ新しい仲間だね。
名前は?」
「…フェイタンね」

たぶん一つか二つ年上の少女は、自分を見下ろしながらジロジロと見てくる。
「あたしはユウ。
仲良くやってこうよ」
差し出されたその手を握る勇気が無かった。
他人の好意が信じられなくて。

「もうっ仕方ないなぁ」
そう言いながらユウはフェイタンの手を掴んで、強引に握手をした。
こんな薄汚れた場所なのに、嬉しそうに楽しそうに笑っている。

ユウは苦手ね…それが彼女の第一印象だった。



「ほら、チビフェイあと10回だよー」
ここへ来て3週間。
自分より背が高くて、力もあるユウに念能力の特訓を受けることとなった。

「もう疲れたね…」
念の力で石を砕く修行だが、もう腕が上がらない。
なかなか容赦がなく、その日も朝から夕刻までしごかれていた。

「じゃあ、今日はここまで!
ここじゃ強くないとやってけないよ」
ユウはフェイタンを見下ろしながら、頭を乱暴に撫でてやった。

パシッと音を立てて、フェイタンはユウの手を払いのける。
時折ユウがそうしてくるが、フェイタンはそれが嫌だった。
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