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□戦闘狂の恋人達
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廃虚になったビルの中。
さっきまで響きわたっていた念のぶつかり合う音は消え、そこは静まりかえっていた。


私はブラックリストハンターで。
たぶん今から死ぬ。

目つきの悪い黒づくめの男は、私の上に馬乗りになって冷たい眼で私を見下ろす。

「お前、なかなか強かたね
痛み無く殺してやるよ」
そう言って男の仕込み刀が喉元へ向かってくる。

幻影旅団になんか手を出したのが運の尽き。

でもさ、どうせ殺されるならこんなに強い男の手で良かった。
でないと自分が情けなくなる。

男の刀の切っ先が喉元触れた瞬間。
その動きが止まった。

「お前…何笑てるか」
眉間に深い皺を寄せて、怪訝な顔をしてこちらを睨みつけてくる。

笑った?私が?
無意識でよく分からない。
思い当たることがあるとすれば…

「あんたに殺されるなら悪くないからじゃない?」
今度はわざとニヤリと笑ってみせた。

男は黙ってそのまま動かずに固まっていた。
だが、しばらくして私の上から体を起こして離れた。

「何のつもり?」
殺すんじゃなかったのか。

男は企むような顔をして、私をなめまわすように見つめてきた。
その目線にゾクリとする。
「気が変わたね。
1ヶ月後にこの場所にまた来たら、闘てやるよ。」
そう言い放ってその場所から立ち去ろうとする。

「ちょっと…何なの!?」
狙った相手に情けをかけられるなんてごめんだ。

面倒くさそうに男は振り返って言葉を吐き捨てる。
「負けたお前に拒否権無いね」

カチンときたが、痛いところをついてくる。
それに今の手負いの私が刃向かっても到底勝てる相手じゃない。

黙る私を置いて、男はまた歩いていった。
最後に一度立ち止まると、今度は振り返らずに聞いてきた。
「名前何ていうか?」

「……ユウ」
訳の分からないこの男に反応するのも面倒になって素直に応えた。

それを聞くと、男はそのままその場から立ち去っていった。



変なヤツ。
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