眠れる森

□2.もう一度
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目を開けて視界に入ってきたのは、見慣れた無機質な天井。
どれだけ眠ったか分からないが、何時間にもほんの数分にも感じる。

体を起こそうとするとズキンと頭に走る痛み。
思ったよりも昨日の酒は残っていた。

けれど、そんなことよりもフェイタンの頭に浮かぶのは昨夜の女…
ヒカリのこと。

死なない女と闘りあうなんて興ざめだ。
『夜はいつもいるから、来たかったらおいでよ』
そう言ってヒカリは何も無かったかのように笑っていた。

あの能力はもちろんだが、ヒカリの流れる黒髪に、そこから覗く瞳。
それが、フェイタンの脳裏にこびりついて離れようとしない。



「昨日はご苦労だったな」
アジトの広場に行くと、既に昼食を終えたクロロがコーヒーを飲んでいた。

「…団長、ちょといいか?」
「何だ?」
コーヒーを飲もうとした手をぴたりと止める。

「念能力で…死なない力は有り得るか?」
クロロの他人の能力を盗むという力から、自分よりも念というものに理解が深いだろうと思えた。

フェイタンの突拍子もない質問だったが、一瞬考えてクロロはすぐに返答をした。
「まず有り得ないな。
人間の能力を越えすぎている」
確かに…
フェイタンもそう考えていたが、クロロに言われることでよりその考えは確信に近くなった。
死なない人間などいない。


クロロが口元に指を寄せ、少しの沈黙の後に口を開いた。
「…あるいは、死なないように見せかけるということは可能だろうな」

見せかけ?
あれが見せかけだったというのだろうか。

今まで何人もの人間を殺してきた。
血の生暖かさも、切り裂く肉の感触もよく知っている。
それを間違えたとでも言うのだろうか。

クロロの言うことに納得しつつも、どこか腑に落ちない。
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