少女狂想
□05.『ありがとう』*
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「あら、可愛い傘ね」
パクノダに声を掛けられ、嬉しかったのかレイラは、はにかむような顔で答える。
「フェイタンがくれた」
「へぇ、そうなの。
素敵なプレゼントね」
意外なこともするものだと、パクノダはフェイタンに視線をやる。
「雨が降てきたから、盗ただけね」
深い意味は無いと言いたげに、フェイタンはパクノダに経緯を話した。
アジトのフェイタンの部屋に戻ってからも、レイラは嬉しそうに傘を眺めていた。
フェイタンからすれば、用済みとなった傘をやっただけだが、レイラとっては宝物になったようだ。
レイラに振り回されたフェイタンは、疲れきった体をソファに深く預けて休んでいた。
…またく、出掛けただけで疲れたね…
目を閉じて休んでいたら、突然左手に柔らかい感触があった。
目を開けるとフェイタンの近くに寄ってきたレイラが、フェイタンの手に触れていた。
「何か?」
フェイタンは面倒くさそうに、もう一度目を閉じて質問した。
「フェイタン…ありがとう」
レイラの手はそっとフェイタンの手の甲に重ねられていた。
「傘のことならいいね」
大げさに礼なんて言う程のものでもないと、フェイタンは思う。
「マチは服くれた…
パクノダは傘褒めてくれた…」
「フェイタンは傘くれて…
私をここに連れてきてくれた」
その言葉にフェイタンは目を開けて、レイラの方に顔を向けた。
「私ここが好き。
フェイタン、あの家から私をここへ連れてきてくれてありがとう…」
蒼い瞳を潤ませて、じっとフェイタンを見つめていた。