少女狂想

□01.『誰?』
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その瞳に捕らわれたのは自分







フェイタンは若干の返り血を浴びた指を拭った。

『こんな雑魚に思たより時間がかかたな…』
世間では凄腕で通っているであろう護衛達の死体を足でどけた。

今日のターゲットは、この大富豪のお宝。
宝石や絵画というまともな物から、人体や残虐な映像類まで多種多様だ。

ターゲットの人物は、おそらく自分が死んだことも理解する間もなく息絶えた。


『……よし…
このくらいでいいね』
価値のありそうな物だけまとめて、アジトに帰ろうとした。


カシャ……

物音。

まだ生き残りがいたか。
チッと舌打ちをして、音の方へ手刀を繰り出した。





その瞬間ふわりと視界は銀色に覆われた。




「あなた………誰?」




くせのかかった銀の髪

無機質なか細い声

陶器のような裸体

人形のような整った顔立ち


……ラピスラズリのような深い蒼い瞳





フェイタンの手は、少女の首ギリギリの所で止まったまま。
いや、正確に言うと動かせなかった。

その瞳に魅入られたように
時間が止まったかのように




一瞬だったが、フェイタンには何分も時間が経ったかのようだった。

我に返り、少女に問う。
「お前こそ何者ね。」

少女は表情ひとつ変えず答える
「私……レイラ……
ここで飼われてる……」


一糸まとわぬ姿。
どんな生活をさせられていたかは、予想がつく。

何よりもその瞳………
………っ!!

フェイタンは自分の知識を手繰り寄せ、気付いた。

「………お前今日一番のお宝かもしれないね」
ニタリと笑った。

フェイタンのその言葉にも無反応なレイラ。
生きた人形みたいだとフェイタンは思った。


フェイタンは自分のコートを脱ぎ、乱暴にレイラに被せた。
「お前の主人は死んだね
死にたくなければ着いてくるね」

意志があるのか無いのか無言で着いてくる。

出口に近付いた頃。


バシャッ!!ガシャン!!!!

フェイタンの後ろで、けたたましい音がした。
振り返ると、レイラが血の海で倒れていた。

フェイタンが殺した人間の血で転んだようだ。
面倒くさそうにレイラを抱き起こす。

その手足からは、ガラスの破片でも触れたか血が流れてた。
光の反射でキラキラと虹色のように輝く血。

その血を見て、フェイタンは思う
「お前……やはり間違いないね」

しかし、さすがに何の能力も無い人間には、これで歩くのは辛いだろう。 

フェイタンは自分の服の端を破り、レイラの手足に巻きつけた。

「………何をしているの?」
フェイタンは眉間にシワを寄せた。
「見て分からないか?
手当てね。血が止まるようにしてやてるね」

……大事な宝に傷が残らないように……

「手当て……
初めてされた……」
珍しいものでも見るように、レイラは布の巻かれた自分の手を見ていた。



こいつのペースには合わせていられないと、レイラを抱えてアジトに戻った。
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