眠れる森

□2.もう一度
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「そうなんだ。
フェイタンは仲間がいて、一緒に暮らしてるんだね」
「別に暮らしてるなんて感覚じゃないね」
1杯目のコーヒーを飲み終わるまで、たわいも無い話が続いた。
蜘蛛の仕事と無関係に出会ったヒカリへ、話せる範囲の会話をする。

ただヒカリは微笑みながらも、それ以上は追求しないように話しているように感じた。
それは、まるでこちら側の人間であるかのように。

「私はいつも一人の仕事だから、ちょっと羨ましいな」
「仕事て何やてるか」
フェイタンがそう聞くと同時にヒカリはキッチンへ2杯目のコーヒーを注ぎに向かった。
自分のマグカップにミルクを混ぜながらヒカリがゆっくりと戻ってくる。


「殺し屋だよ」
そう言うヒカリの言葉とは裏腹に、その表情は弱々しく微笑む。


“こちら側”
即ち闇の世界に生きる人間。
きっと彼女もフェイタンのもつ闇を感じ取っていた。

「…ま、死なないお前にはぴたりの仕事ね」
「それくらいしか取り柄がないからね」
冗談でも言うかのように、へらへらと緩く笑顔で返してくる。


「殺されるのは慣れたけど、殺すのはいまだに慣れないもんだね」
そんな台詞はヒカリしか口に出すことはないだろう。
躊躇なくヒカリを殺そうとしたフェイタンとしては聞いていて気分のいいものでは無い。

「だたら、なんで殺し屋なんてやてるか」
「んーと、まぁ事情があってね。
子供のときマフィアに拾われて、ずっとこの仕事やってるから。
他の生き方を知らないんだよ」
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