進撃の巨人 夢小説文
□見慣れた光景に目を見張る
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エルヴィンの質問にレティが押し黙ること数分…これ以上待つのは性分じゃねえ…
早くしろと文句を言うべく開きかけた口は、レティの意外な言葉の前に消えた。
『見せてあげる…』
レティは今にも泣き出しそうな表情でそう言うと、傷口に巻かれた包帯を解き始めた。
「あ、ちょっと…まだ怪我が…」
それを慌てて止めようとするのは、包帯を巻いた張本人のクソメガネ。
しかしレティはそれを意に介さず、シュルリと包帯を外した。
「ッ!?」
「え?」
「…どういう事だ?」
包帯の巻かれていた部分が露になると同時に、エルヴィンとクソメガネが目を見開く…俺もその光景に驚き、思わず眉間に皺を寄せ呟いた。
俺はレティを捕まえる時に擦りむく程度ではあるが怪我を負わせた…筈だ…
だが、包帯を外したそこには傷痕なんて見当たらず…あるのは他と変わらない白い肌。
『どういうって…治ったの…』
困ったように笑い話すレティは自身の左手首に触れ…
『ちゃんと見ててよ…』
そう言うと、徐に爪を立てた。
「「「!!?」」」
細い手首から滴り落ちる赤い鮮血…傷口は思いの外深く抉れ、骨だろうか白いのが見え隠れしている。
俺達は今度こそ絶句した…
それと同時に思い掛けない現象に目を見張る。
―シュゥウ…
傷口から上がる白い蒸気…何度も、嫌と言う程見てきた光景。
ゆっくりとだが…目に見える早さで確実に塞がっていく手首の傷。
「おい…レティ、お前…」
説明を求めレティを見るが…俯いている為、その表情はよく見えない。
「レティ!?凄っげえーッ!!ちょっと手首見せてよ!!」
興奮のあまり叫ぶクソメガネを睨み付けた所でレティが顔を上げ、それを見たエルヴィンが怪訝な表情を見せた。
エルヴィンに釣られ、レティを見れば、金色だった筈の瞳が赤に変わっていた。
『私はどんなに大きな怪我をしても、この通り治る…回復中は瞳が赤くなり、瞳が赤い時の私は巨人に襲われない…』
そう話すレティの肩は微かに震えている。
『これが…私が化け物と言われてきた理由…そして…今、生きている理由…』
そう話し終えたレティの手首は血に塗れてこそいるが、抉れた筈の傷は跡形もなく治っていた。