鬼灯の冷徹 夢小説文

□夜叉ッキー誕生
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「そこでじゃれ合っているのが、夜叉太郎と夜叉次郎…妻の傍にいるのがチー子だ」


翌日、シオンと共にやって来た夜叉一さん宅…

仔犬について説明をしていく彼だが、私はその話を集中して聞くことが出来なかった…

何故なら…


『わぁ…か、可愛いッ!!仔犬がこっち見てる…あ、寄って来た!!可愛い!!』


仔犬に夢中のシオンが可愛すぎたからだ。


『鬼灯様は一緒に遊ばないんですか?可愛いですよ!!』


可愛いのは貴女です…そんなに口元を緩めて、頬まで染めて…他の男に言い寄られたらどうするのですか…!!


「そうですね、では…」


内心で叫びつつ、仔犬を抱き上げるシオンに言葉を返し、私は彼女に歩み寄る。


『…………』

「…………」

『………あの、鬼灯様?どうしたんですか?』

「…え?一緒に遊ぼうかと…」


仔犬を抱く彼女を抱き上げれば、首を傾げていたシオンはにっこりと笑った。

この笑顔が私以外にも向けられるのが堪らなく残念だ…しかし、誰にでも優しく愛想が良いのも彼女の長所だし、私が好きな所でもある。

…いっその事、もう告白でもしてしまおうか…?

天然な一面を持つシオンでも、真っ向勝負を仕掛ければ、勘違いなどしない、だろう…

あわよくば、シオンの方から私に惚れてはくれないだろうか…

そんな思考に頭を悩ませていた私は、いつの間にか私の腕から抜け出していた彼女の話をきちんと聞いておらず…


『本当は大好きなんです』


シオンの突然の言葉に、柄にもなく固まった。


『…鬼灯様もそうですよね…?』

「………えぇ、しかし私の場合は大好きでは足りません…表現的には愛してると言った方が正しいです」


何と返すべきなのだろう…いざとなったら迷うが…やはりここは正面突破しかない…やっとの事で紡いだ言葉に全ての思いを込めた。

途端に笑顔を輝かせるシオンに、私もやっと思いが通じたのだと表情が和らぐ。


「…にしても、何故分かったのですか?」

それと同時に何故、急に私の気持ちに気付いたのかを聞いてみる。


『…何故って…いつも鬼灯様のこと見てましたから…』


微笑む彼女に心躍らせていたのも束の間…彼女の次の言葉で、私は再び固まる事となる。


『シロちゃんや動物達に構っている鬼灯様はとても嬉しそうで…あれを見ていれば、鬼灯様の動物達への並々ならぬ愛情はこちらにも伝わって来ます…!!』


…え?確かに動物は好きですが…。


「あの…何の話をしているのですか…?」

『え?…私の家では動物が飼わせて貰えなくて……でも、本当は昔から動物が大好きで…』


……あぁ…そう言う事か…


『…って、あれ?もしかして、話が噛み合ってない…んでしょうか…?』

「はぁ…恐ろしいですね…」

『え?何ですか?』


…本当に…初めてだ…天然がここまで脅威に感じたのは…

私の言葉に更に困り顔になるシオン…

そこからふと視線をずらせば、夜叉一さんとクッキーさんが、私を哀れむような目を向けていた。


「さて…そろそろお暇しましょう…」

「「…!!?」」

『もうですか?…わッ…!?』


そんな2匹に睨みを効かせ、私はシオンの手を引き立ち上がらせる。

少々乱暴でしたね…でも今日は謝りません…私も少なからずショックだったので…。

…とは言っても、歩幅を無意識の内に合わせていた私は、やはり貴女には冷たくすることが出来ないようです。






 
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