鬼灯の冷徹 夢小説文

□夜叉ッキー誕生
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出張を終えた私は、今しがた閻魔殿へと戻り、後片付けもそこそこに執務室へと向かった。

自らの机に溜まっている書類に目を向けると…どこか違和感を感じた。

その引っ掛かりを拭えないまま、書類に軽く目を通せば、それらは全て私の判子が必要な物のようで…

更に言えば、それ以外の書類が見当たらず…3日間、留守にしていたには書類の数も…あ、少ない。

先程の違和感の正体はこれか…積み重なっている筈の書類が、数えられる程度しかないのだ。

普通なら一体、誰が…と悩む所だが、私の周りでこんなことをやってのける者なんて、生憎1人しか思い浮かばない。

導き出した回答に室内を見渡すが、これらをやった人物は見当たらない…。


『鬼灯様!鬼灯様!』


クイクイと軽く袖を引かれる感覚と同時に自分の名を呼ぶその声は今、まさに私の探していた人物。


「…どうしました?シオン…」


振り返った私は彼女の頭に手を置く。

そんな私を見上げるシオンの表情はいつにも増して柔らかく、ニコニコしている。


『鬼灯様も明日はお休みですよね?』


可愛い…下から見上げるこの小動物が可愛くてしょうがない…


「えぇ、まぁ…」


小首を傾げるシオンに内心悶えつつ頷けば、パッと嬉しそうな笑顔が返って来た。


『じゃあ、一緒に夜叉一くんのお家に行きませんか?』


…何故、夜叉一さん?と思ったのも束の間、シオンの次の言葉で理解した。


『夜叉一くんとクッキーちゃんの子供、ついに産まれたんですって!!』


あぁ、そういう事か…確か、夜叉一さん自身も今日は予定日だと言っていたな…

期待を込めた眼差しで私を見るシオン…私はそんな彼女の誘いを断るなんて馬鹿な真似はしない。


「シオンのお陰で明日は書類に追われることもありません。一緒に行きましょう…」

『!!やったぁ!!』


私の言葉に目を輝かせるシオンは子供のようにはしゃいだ後、ストンと席に腰を下ろし、頬杖を付く…

しかし、その表情は未だにニコニコとしたままで、視線は私を見上げていた。

普通ならいつまで見てんだと文句の一つも零すだろうが、やはり相手がシオンでは見つめられていると取ってしまう私…
相当嵌っているな…なんて分かりきったことを頭の隅で思いながら、私も自分の席に着き、彼女の笑顔を糧に押印の作業に取り掛かった。






 
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