鬼灯の冷徹 夢小説文

□運動会実行委員の会議
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「…と言うことで、今年の獄卒大運動会ですが…今年は少々、工夫をしてみようと思います…」

『100回目ですもんね…具体的には、どんな工夫を?』

「そうですね…精神的負担を伴えるような競技にしたいですね」


来週に控えた大イベントについて話し合うのは、実行委員長の鬼灯と副委員長のシオンだ。


『…精神的負担、ですか…』


手元にある、去年までの資料に目を落とし、考え込むシオン…


「いきなり考えるのも難しいでしょう…なので、まずは競技を決めましょう…」

『競技自体は去年と似た感じでいいですよね…』


そう言い、競技名を書き出していくシオン。

借り物競争、パン食い競争、徒競走、玉入れ、大玉転がし…


「そんな所ですかね…」

『…この競技それぞれに、精神的負担を付加しなきゃいけないんですね…!!』

「ある程度のことは、考えてります…こんな感じに…」


そう言い、鬼灯は自らの手帳をシオンの目の前に差し出した…。


・借り物競争…借り物の内容は躊躇うような物に。

・パン食い競争…完食するのか困難な味のパンを用意。

・徒競走…ただ走るだけでは詰まらない…ツライ体制で。

・玉入れ…玉はスカラベさんに頼む。

・大玉転がし…命懸けのピタ〇ラスイッチ風に。


『…凄いですね…これだけ分かってれば、考えやすいですね』

「具体的な内容はこれから考えましょう…ではまず、借り物競争ですが…借り難い物とはどんなものでしょう…?」

『そうですね…異性や上司、先輩なんかは、やはり抵抗があるかもしれませんね…』

「分かりました。後はそれを参考に私が考えておきます…」


・好きな異性

・私服が残念な上司

・苦手な先輩


そう言い、懐から出したもう1つの手帳に残酷な項目が書かれていく。


「パン食い競争は芥子さんに頼もうと思っています…是非とも彼女の辛子味噌を使用したい」

『なら、芥子ちゃんには私からお願いしておきますね!!』

「徒競走、玉入れはいいとして…問題は大玉転がし…」

『どんなカラクリにするんですか?』


話が纏まっていく中、真打となる競技に頭を悩ませる鬼灯に、シオンが首を傾げる。


「スタートはやはりドミノがいいです」

『玉はどこ行ったんですか…』
「ドミノを倒すのと、仕掛け同士の繋ぎに使おうかと…」


言葉と共に、自身の前に立てたクリップボード。


『何か…玉を転がすと言うより、玉に追われそうですね…』


そこに書かれていた、既に完成形のカラクリの大まかな図と説明を見て、シオンが呟く。


「競技はこんな感じで良いと思うのですが…私としてはもう少し、プログラムの内容を増やしたい…」


何かありませんか?と首を傾げる鬼灯に、シオンがんー…と唸る。


『あ、なら…動物ちゃん達にも何かしてもらいませんか?…出し物的な感じで…』

「それいいですね…!!地獄に多くいるのは、犬と鳥と猿…シロさん達で考えますか…」

『個人的には、ルリオくん達には歌ってほしいし…柿助くん達には組体操とかやってもらいたいです!!』

「…発想が可愛いですね…では犬は…無難に闘犬にしましょう…!」


ある程度の事が決まり、シオンはノートに纏めた即席のプログラムを鬼灯に渡した。


『こんな流れでいいですか?』

「…えぇ、あとはパソコンに打ち込んでコピーすれば、プログラムは完成ですね…」

『他に決めることはありますか?』


シオンの手書きのプログラムを眺め、鬼灯が首を縦に振る。


「細かいことですが、小道具や競技中のBGMなど…」

『小道具?』

「はい、競技のスタート合図にはライカンピストルではなく、迫力のあるバズーカを使おうと思います」

『…し、心臓に悪そうですね…えーっと、BGMの方は?…候補はあるんですか?』


苦笑いのシオンが、もう一つの決めることを聞く。


「えぇまぁ…オッフェンバックの天国と地獄か、シューベルトの魔王のどちらにしようか考えています」

『どっちも合うとは思いますけどね…知名度的には天国と地獄の方が良いと思います…何より、魔王は走り難いんじゃないでしょうか…』


シオンの言葉に、確かにと頷き、鬼灯はノートに書かれていた、魔王の文字に二重線を引いた。


「あ、シオンには言っておきましょう…実は今、公開されている運動会の日時ですか…」

『はい?今月の20日ですよね?』

「それはリハーサル…所謂、総練習の日で、本番はその翌日の21日です…」

『…そ、そうなんですか…』

「分かっていると思いますが他言無用でお願いします」


何食わぬ顔でそう告げる鬼灯…。

リハーサル後のみんなの表情を見た、シオンが罪悪感に苛まれるのは、また別の話だ…。






 
 

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