鬼灯の冷徹 夢小説文

□鬼灯の好み
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食堂にやって来た閻魔とシオンは、何を食べようかとメニューを眺めている。


『大王は何にするんですか?』

「ワシはシーラカンス丼のXLにしようかな?」

『シーラカンスって、変わった味ですよね…』

「シオンちゃんは何食べるの?」

『…オムライスセットで…』


お互いに注文し、食事を受け取り、座ろうと食堂を見渡す。


『あ、鬼灯様…』


そこに見慣れた上司の姿を見つけ、シオンは声を掛けた。


「おや、シオン。隣にどうぞ」

「見かけないと思ったら、ここにいたんだね」

「仕事終わったんですか?」


テレビの前の席を陣取っていた鬼灯はシオンに隣に座るよう勧めたあと、閻魔に怪訝な目を向けた。


「シオンちゃんのお陰で、久々の定時上がりだよ!!」

「…チッ、またシオンに負担掛けたのか…」

『いえ、大したことはしていませんよ』


ニコニコと話す閻魔に鬼灯の眉間の皺が深くなった。

そんな二人にシオンは苦笑いで答える。


「これって、現世の番組?」

「そうです。CSにすると見られますよ…シオンはこの番組知っていますか?」

『世界で不思議発見?…タイトルだけ、聞いたことありますね…』


そう言って、シオンはオムライスを食べ始める。


「そっか…シオンちゃんってあんまりテレビとか見せてもらえない家だったもんね…」

「死後の方が、活き活きしてますよね」

『コアラ!!コアラだ!!本でしか見たことない!!動いている!!』


テレビに夢中のシオンは二人の会話など露知らず、番組に見入っている。


「…長い付き合いだけど、未だに君のミステリーは尽きないよ」

「そうですか?私は至って単純な男ですよ」

「女の子の好みとか想像できないし…」


閻魔の言葉に鬼灯は顎に手をやり、首を傾げて、考える素振りを見せる。


「そうですね…このコは割と可愛いと思います」


と、指差すのはテレビでレポーターを務める女性。


「あーー…君、こういう感じが好きなんだ…」

「別に顔の好みはあまりないのですが…虫や動物に臆さない人がいいですね…」

「あぁ、成程…」


動物などの可愛いものを好む鬼灯の性格上、妙に納得する閻魔。


「あと、明るい女性も好きですよ」

「君に明るい方がいいとか言われたくないだろうけど…」

「…ま、色々言いはしましたが…」


閻魔のツッコみを味噌汁と一緒に流し込み、鬼灯は纏めるように言い放つ。


「シオンがドストライクのモロタイプなわけですよ」

「よく何の躊躇いもなく言ったね!!?」

『わーッ!!芋虫って美味しいんだぁ…』


鬼灯はシオンに視線を向け、普通の声のトーンと大きさで言うが、当の本人はやはりテレビに釘付けだ。

閻魔は鬼灯の爆弾発言に驚きの声を上げる。

薄々は気付いていたが、やはり本人の口から聞くと驚くものだ。


「えぇ、私はシオンが好きですので…」

『ん?私も鬼灯様、好きですよ?勿論、大王も!!』


鬼灯がシオンの頭をくしゃりと撫でたところで…漸くシオンがテレビから視線を外す。

無邪気な笑顔で言うシオンの言葉が如何に残酷なものか、本人は分かっていない。

閻魔は鬼灯に同情した。


『あ、鬼灯様!!名前が載っていますよ!!』

「これって…当たってる!?オーストラリア4日間の旅」

『わぁ!!おめでとうございます!!』


シオンに呼ばれ、テレビに視線を移した鬼灯は、スケジュール帳とシャープペンシルを取り出し、有給の申請を申し出た。

因みに、クリスタルヒトシ君は2つ目とのことで、シオンのデスクに置かれた。






 
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