鬼灯の冷徹 夢小説文

□結婚談義
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…鬼灯は不喜処の自販機でシロに飲み物を買ってやり、一人と一匹は何気ない世間話をする。


「あれ?シオンちゃんは?」

「彼女なら先程のテレビを片しに行きましたよ。私も行こうとしたのですが…」



―『鬼灯様は休憩なさって下さい。鬼灯様が一緒ならシロちゃんも喜びますよ!!』―



「飛び切りの笑顔で、やんわり断られてしまいました…終わったら来るそうです」

「鬼灯様ってさぁ…」


心なしか落ち込んでいる鬼灯を見て、シロがふと思ったことを口にする。


「シオンちゃんのこと好きなの?」

「…………そう、ですね…」


長い沈黙の後、鬼灯がポツリと呟いた。







『お待たせしました…って、どうしたんです?』


シオンが戻って来ると、そこにはいつも通りの鬼灯と放心状態のシロ…そしてほっこり笑う閻魔がいた。


「それがね聞いてよシオンちゃん!!シロちゃんの先輩が結婚するんだって!!」

『あぁ、夜叉一くんとクッキーちゃんですか?交際期間8年って、割とスローペースですよね…』

「知ってた上に、妙に詳しいですね…」


鬼灯の的確なツッコみに、相談されてましたから…とシオンが笑う。


「そう言えば、シオンちゃんって生前は結婚してたんだもんね」

「ホント!?結婚ってどんな感じ?」

『え!?』


閻魔の何気ない言葉にシロが興味を持ち、ベンチに腰掛けるシオンの太腿に前足を乗せ、尻尾をブンブン振る。


『ん〜…私の場合は政略結婚だから…。どんな感じって言われても…』

「政略結婚?」

「政治的に利用するための結婚です。だから、その多くは当事者の意思は度外視されます」


鬼灯の説明を受けたシロは複雑そうな顔をした。


「そうなんだ…ごめんなさい…」

『気にしてないよ。そんな顔しないで?』

「…シオンちゃんって、どんなタイプが好きなの?」

「!!」

『好きなタイプ、ですか?』


閻魔の唐突な質問に、ピクリと反応した鬼灯を閻魔は見逃さなかった。

シオンは首を傾げ唸る。


『…優しい、とか…ですかね?』

「もっと具体的にお願いします」

「(…鬼灯君が思った以上に、食いついてきた!!)」

『具体的にと言われても…正直分かりませんよ。恋愛なんてしたことありませんし…』


やっとのことで答えたシオンに、鬼灯が食いつき、閻魔が心の中で驚く。


「シオンちゃんは恋愛に興味ないってこと?」

『そんなことないよ。私だって普通の女の子のみたく恋もしたい。そしていつかは心から愛した人と結婚もしたい…と言っても…既に死でる私には無理な話だけどね…』


シオンはシロの言葉に、きらきらの笑顔で言いながらも、最後には自嘲的な笑みに変わった。


「亡者でも恋愛できますよ…ここは社内恋愛の制限も特にありませんし…」

『ありがとう…鬼灯様…』

「「((狙ってる!!…鬼灯君(様)、確実にシオンちゃん狙ってる!!))」」


優しい声色でシオンに言い、ちゃっかりその頭を撫でている鬼灯を見て、閻魔とシロの心がシンクロした。

赤面しながら鬼灯とシオンを交互に見る閻魔に、鬼灯の金棒が飛んでくるまで、あと数秒…。






 
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