ONEPEACE 夢小説文

□結局は餌付け
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おれは一足先に船に乗り込み、ミシェルに声を掛けた。


「…何してる、早く上がって来い」


しかし、おれの言葉に反して、その姿は遠ざかって行く…が、そんなもん予想の範囲内だ…。

寧ろ、これだけの隙を見せれば…少なからず、ミシェルにも隙が出来るだろうと踏んでの行動。

案の定、背中を向けたミシェルに計算通りと笑みを浮かべ、おれは予め拾っておいた石を手に、能力を発動させた。


「…"ROOM"…シャンブルズ…」


おれのサークルを視界に納めたミシェルの足が止まると同時に、指を折る。

…それを合図に石とミシェルの位置が入れ替わり、状況が呑み込めずきょとんとするミシェルはおれの腕の中。


『…へ?…え、ここ…』

「ようこそ、おれの船へ…!」


勝ち誇った笑みで言ってやれば、青ざめていた顔は急に赤くなり…忙しそうだ…。

かと思えば、目を白黒させ悲鳴を上げるが、問答無用で船内へ引き摺って行き、今に至る。


『………』

「フッ…そんな怒んなよ」


ミシェルを連れて来たのは食堂…その一番奥の席に座らせ、おれもテーブルを挟んだ向かいに座る。

…見張り番のベポを除くクルーが、全員町に出払っていたのは、好都合だった。

隠すことなく殺気を放ち、おれを睨みつけるミシェルを宥めるように言うが、聞く耳を持たない。


「うめェモン食わせてやるよ」

『…トトさんの料理もおいしいもん』


ベポを持ち場に戻らせ、無言を貫くと思われたミシェルに、頬杖を付きながら声を掛ければ…不貞腐れたような声音が帰って来た。


「オレの料理だって、ウマいぞ!!」

「悪いな…停泊中なのに…」

「別に気にしちゃいねぇさ!二週間も休んでたら腕が鈍っちまう…ちょうど良かったよ」


そこにタイミングよく現れたのは、この船のコック…右手で料理の乗った皿を持ち、左手を腰に添えている。

航海中の食事は全てコックが作るが、島に滞在中は余程の理由が無い限り、基本そういったことはしない…。

各自、島で好きに飲み食いするからだ…。

今回も例の通りだったが、おれの命令で厨房に立つハメになったコイツに労うように言えば、気前よく笑う。


「さ、どうぞ…?」

『…!』


持っていた皿をミシェルの目の前に置くコック…チラリと視線を皿に向けたミシェルが、僅かに反応を示した。

…それはそうだろう…皿にはキラキラと光を反射させる、如何にも甘ったるそうなチョコレートケーキが乗っているのだ。


『………』

「何だ、食わねぇのか?」


尚も黙り込むミシェルに聞けば、恐る恐ると言った感じに、フォークを持ち、一口分だけを切り、ゆっくりと持ち上げた。

しかし、それは口元で止まり、どうしたのかと思えば、ジッとおれを見ている…。


「…はぁ、変なモンは入れてねェよ…」


いいからさっさと食えと溜め息交じりに言えば、パクリと口に含む。


『ッ!!』


そして、微かに見開かれた目に、おれとコックが笑みを浮かべる。


『……お、おいしい…//……ッ!!』


味わうように咀嚼し、コクリと飲み込まれたケーキ…呟かれた感想、ハッとしている辺り…恐らく無意識なのだろう…

ミシェルの素直な反応に気を良くしたコックは、次々とスイーツを運んでくる。


「…どうだ?おれと来れば毎日、食わせてやる」

『………(毎日…)』


控えめに向けられた視線に、もうひと押しだと直感する。


「ウチのコックは元々パティシエでな…お前の知らないスイーツも作ってくれるだろうよ…」


ミシェルの目が一瞬、キラリと光った気がした…


―プルプルプルプル…プルプルプルプル…


…と同時に聞こえたのはでんでん虫の呼び出し音…

おれはポケットから取り出したそれを手に、席を立ち…食堂入り口の壁に背を預け、受話器を取った。






 
 

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