ONEPEACE 夢小説文

□人はそれを拉致と言う
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ローにカフェに連れて行かれた日…あの日の夕方もローは仲間を連れて店に来ていた。

翌日の昼間も町でローに会い…夕方にはまた仲間と共に店に来る…。

おまけにあの日から、ローの仲間までもが、やんわりとだが一緒に来いと声を掛けてくるようになった。

それが繰り返されること3日…諦めるどころの話じゃなかった…


『いい加減、私に付き纏わないでよ…』

「何だ?」

『私は海賊にはならない…これ以上、海軍に追われたくないの!!』


溜まっていたイライラを吐き出してしまった。

騒がしい町中だったため、周りに聞こえていないのはせめてもの救いだろう。


「お前が素直に頷けば、付き纏わねェよ…」

『諦めてって言ったじゃない!!』

「おれが諦めるのを諦めろ…」


埒が明かない…逃げよう…。


『…今日はお店の定休日だから』


それじゃ…と背を向けた瞬間に、襟首を掴まれた。


「逃がすか!!」

『ちょッ!!離して!!』

「休みなんだろう?なら、いいじゃねェか」

『違う!店に来るなって意味で言ったの!!』


そのままローは文句を言う私を引き摺り、自らの船へと足を進めた。

…この船にお邪魔するのは2度目…最初は港にあったこの船も、私の助言のせいか、今では入り江にある。


『帰る!!』

「そう言うな…飯でも食ってけって」

『お腹空いてないから!』

「あ、やっぱりミシェルの声だぁ!!」


尚も反抗する私を宥めるロー…私達の騒ぐ声を聞きつけ、甲板から顔を覗かせたシロクマ。

人が集まって来ては、本当に逃げる機会を失ってしまう!!

この場からどう逃げるかを考えていれば、徐に私の手を離したロー。

そして、海岸に落ちていた石を拾い上げたかと思えば…あろうことか、その足場を蹴り、船へと飛び乗った。


「…何してる、早く上がって来い」


唖然と見上げる私に、当たり前のように言葉を降らすロー。

…え、この状況…どうぞ逃げて下さいって言ってるようなものじゃ…

それとも、私が従うという確信でもあるのか…もしそう思っているのなら、その考えを改めて欲しい物だ…

生憎、私はほいほいと言いなりになんかならない。

まぁいい…ここで悩むだけ時間の無駄だ…そう結論付け、私はトトさんのお店に帰るべく、踵を返す。


「え、何で!?ミシェル!?どこ行くの?」


背中に切なげなベポの声を受けるが、足を止めることはしない。


「―――…」


しかし、ローが小さく何かを呟いたかと思えば、眼前に現れた半透明の膜状の何か…。


『…何、これ?』


さっきまで無かったそれに驚き、足を止めた瞬間だった…それがいけなかった…


『…へ?…え、ここ…』


私の視界にさっきまでの膜は無く…代わりに映るのは私がさっきまで歩いていた砂浜…。

そして、視界が変わると共に感じた、腰と肩への違和感と背中の温かみ…


「ようこそ、おれの船へ…!」


頭の真上から降って来たその声に、さっと血の気が引く…と、同時に顔に熱が集まるのが分かる…。

恐る恐る、後ろを振り返れば…ニヒルに笑うローの姿があり、その腕は私の腰と肩に絡み付き、離れる気配は微塵もない…。

…状況を理解した私の悲鳴が、船中に響いたのは言うまでもない…。







 
 

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