ONEPEACE 夢小説文
□バレバレの嘘
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店を出て行こうとするミシェルに声を掛けてはみたが…案の定、振り返ることはせず、行ってしまった。
『私はさ…帰りたい所に帰れなくて、旅をしてるんだ…』
ミシェルが言った言葉…その時のアイツの表情が嫌に頭に残り、追いかける気にもなれず、ただその背を見送った。
今にも泣き出しそうな、何かを懐かしむような…そんな表情…
どういう事だと開いた口は、最後まで言葉を紡ぐことはできなかった。
『何てね?嘘。私は海賊はやらない…海軍に追い回されるのは御免だから…』
さっきまでの泣きそうな顔から一変し、にっこりとした笑みで、はぐらかされたからだ。
ミシェルが出て行った扉に目を向け、溜め息を吐く。
…まったく…嘘を吐くなら、もっとバレねェ嘘にしろよ…
アイツに出会って、まだ日は浅いが…アレが作り笑いであることくらい、おれでも分かる。
『私を海賊にするのは諦めてね』
…にしても、諦めろ…か…。
何度、言わせる気だ…おれは海賊…欲しい物はどんな手段を使っても、手に入れる。
…と言っても、ミシェルを無理矢理に連れて行くつもりはない…
おれが気に入った以上、アイツのことは心ごと手に入れるつもりだ。
結果として、おれの興味をますます惹くことになったんだ。
話を逸らすつもりだったんだろうが、読み違えたな…。
…今は逃げられたが、どうせ店に行けばいるんだ…諦めるのはお前の方だぜ…ミシェル。
「…ククッ…覚悟しやがれ…」
今のおれは恐らく、悪い笑みを浮かべているだろう…。
おれはミシェルの置いて行った、ココア代であろう金をポケットに突っ込み、会計を済ませ店を出た。
カフェを後にしたおれは、船へ戻った。
「あれ?早かったッスね…」
「あの酒場に行ったんじゃないんですか?」
おれが戻ったのに気が付いたシャチとペンギンが声を掛けて来た。
「あぁ、町でミシェルを見かけてカフェへ連れて行ったんだがな…」
逃げられた、と言えば、2人揃って驚いた顔になる。
「船長から逃げるって…スゲェな…」
「追わなかったんですか?」
「まァな…」
感心するシャチをよそに、首を傾げるペンギンに曖昧に答えた。
「…どうかしたんですか?」
「決めたよ…」
おれの答えに疑問を持ったペンギンの言葉に、ポツリと漏らした。
「絶対にミシェルを仲間にしてやる…」
小さく告げた決心は、人のいない船内に響き、それを聞いていた2名のクルーはやれやれと笑うのであった。