ONEPEACE 夢小説文
□強引な要求
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私は店で必要な食材や酒類を発注すべく、町の店を転々としていた。
『…塩とソースがそろそろ切れそうだから、ストックも含めて3つずつ追加で…!!』
店の倉庫に置かれた在庫を思い浮かべながら、得意先の調味料専門店のおじさんに言う。
「おう!!他にはあるか?」
『んー…今のところは大丈夫!じゃあ、お願い!!』
領収書の受取人氏名欄にサインし、次の店へと向かう。
…次の目的地である、家具屋へ行く途中…歩いていると私の目の前に誰かが立ちはだかった。
「よぉ…!!」
避けようと思った所で、頭上から降って来た聞き覚えのある声に、ふと視線を上げた。
『…あ、』
案の定、視線の先にいたのは、長い刀を担ぎ、どこか楽しそうな表情の…
『船長さん…何でここに…?』
「お前に会いに来た」
私の問いにきっぱりと言い放つ船長さんに、仕事中だと話せば、邪魔はしないとのことなので、放って置くことにした。
「家具屋に何の用だ?」
『この前、海賊に壊されたドアの修理を頼むんです』
不思議そうに尋ねる船長さんに返し、入り口まで出ていた見習いのお兄さんに話し掛けた。
「やぁ、ミシェル!!また海賊を捕まえたんだって?」
『まぁね…それでまた、ドアの修理、頼みたいんだけど…』
「分かった。親方に伝えとくよ!!」
そう言い店内に戻って行ったお兄さんを見送り、私も次の店へと足を進めた。
『おばちゃん、こんにちは!!』
「あら、ミシェルちゃん!!いらっしゃい!!」
次に足を運んだのは精肉店。
にこやかな笑顔で、出迎えてくれたおばちゃんに、発注に来たことを伝える。
『海ブタの肩ロースと怪鳥のモモ肉を5Kgずつ…』
「はいよ!」
メモを取ったおばちゃんは、それよりさ…と私の後ろに目を向けた。
「ミシェルちゃんがトト以外の男と一緒にいるなんて珍しいね?彼氏かい?」
「まぁな…」
『違うよ…最近お店によく来るお客さん』
おばちゃんに聞かれ、間違った返答をした船長さんに、呆れつつ…訂正した。
「そりゃあ残念…」
と肩を竦めて笑うおばちゃんに私もつられて笑い、店を後にした。
「なァ?」
『何ですか?』
あとは帰るだけかな?なんて考えながら細い路地に曲がった私は、船長さんの声に振り返らず、返事だけを返した。
「帰るのか?」
『…そうですね…お酒はまだ在庫があるし…』
歩いている道で分かったのか、そう続けた船長さんに、頷き答える。
「そうか…なら、この後、付き合え…」
そう言うや否や、私の手を取り、来た道を戻り始める船長さんに、たじろぐ私。
『えッ、あの!!船長さん…!?』
「………」
『…船長さん!!一体どこに…?』
「………」
『ねぇってば!!船長さ…』
「ローだ…!!」
無言で歩き続ける船長さんに、少しだけ大きな声で言えば…足を止めて、こちらに向き直る彼に遮られた。
『え?』
ろーだ…って何?どういう意味…?
船長さんの口から出た単語に、意味が分からず、思わずポカンとしてしまう。
「おれの名前だ。“船長さん”は止めろ…」
困惑する私に、船長さんが言葉を付け加えたことで、漸く理解した。
だが、生憎…海賊相手に仕事以外で名前で呼ぶつもりはない…ベポは別として…
『船長さんには悪いけど…私は……ッ!?』
言い掛けた私は、何気なしに顔を上げ、言葉を止めた…船長さんの顔がすぐ近くにあったことに驚いたからだ。
慌てて、距離を取ろうと後ろに下がるが、すぐに背が壁に当たり、ここが狭い路地だったことを思い出す。
「聞こえなかったのか?」
『…ッ…//』
逃がさないと言わんばかりに、私の顔のすぐ横の壁に手を付き、耳元に口を寄せ囁く船長さん。
息が掛かる程の距離にある船長さんの顔はどのパーツも整っていて…何故かこっちが恥ずかしくなってくる。
恥ずかしさに目を逸らせば、船長さんは空いている方の手を私の顎に添え、視線を合わせるように上を向かせた。
「…おれの名を呼べ」
小さなパニックを起こしている私の脳内…そこに追い打ちを掛けるように、船長さんの色気のある声が響く。
『……ろ、ッ…ロー…!』
やっとのことで絞り出した声。
「声は小せェが…まァいいだろう…これからは敬語も使うなよ…?」
怪しく笑う船長さん改め、ローに一切の思考が停止してしまった私は、コクコクと頷くしかなかった。