ONEPEACE 夢小説文

□尖った耳
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営業時間を終え、後片付けをしていた時…


『はぁ…』

「どうした?ミシェル…溜め息なんて珍しいな…」


ふと漏れた溜め息に、トトさんがグラスを洗う手を止めた。


『いや、何と言うか…疲れたなって…』

「あんな連中と戦ったくらいでか?」


トトさんの言うあんな連中とは、恐らく先程、私が捕まえた海賊だろう…。

でも、そのせいで疲れたわけじゃない…

寧ろ、弱すぎて…何故こんな奴に530万ベリーもお金を出すのかが理解できなかったくらいだ。


『まさか!!…あの船長さんよ…』


名前は知らないが、ベポがキャプテンと呼んでいた、あの背の高い隈男…。


『あの人と話してると、何か色々見透かされそうで…』

「あぁ、気ィ張りすぎた訳か…」




―「お前、悪魔の実の能力者か?」

『…私はそんなもの食べてませんよ』

「…私“は”?」

『えぇ、私は食べてないけど…船長さんは食べてるでしょ?』―





トトさんに頷き返しながら、カウンターでの船長さんとの会話を思い出す。

船長さんに反復されて、冷静に返した私だが…内心どれだけ焦ったことか…。


『…また来るって言ってたっけ…』


早く、出航してくれないだろうか…。


「楽しそうに見えたけどな…」

『…そう?』


確かにベポのお陰で、シャチさんやペンギンさんとは何やら打ち解けた。

でも、船長さんはよく分からない…何だか掴めない…。


「さて、後はオレがやるから、ミシェルはもう上がっていいぞ?」

『ん、じゃあ…テーブルだけ拭いて休もうかな…』


いつもなら明日の分の酒樽の仕入れとかも手伝うんだけど…最初に言った通り、今日は疲れた。


『トトさん、お休みなさい』


テーブルを拭き終えた私は、そのまま2階に上がり、部屋のベッドに横になった。











『あ、寝過ごした?』


どうやら、あの後すぐに眠ってしまったらしい私が目を覚ましたのは、翌日のお昼前。

…どれだけ疲れていたのだろう…。

私はシャワーを浴び、お店に降りた。


「おう、遅かったな…ミシェル!!」

『ありがとう。…?…何か、良いことでもあったの?』


頭を拭きながらカウンターへと座れば、何やら機嫌のいいトトさんが言いながら、アイスココアを出してくれた。


「良いことって…お前なァ…」


ココアに口を付けた所で、呆れた表情で私を見下ろすトトさん。

そんな彼はカウンターに小さな紙袋を置き、徐に引っ繰り返した。


『…あぁ…換金してきたんだ…』


ボトボトと音を立て、カウンターに落ちた札束を見て、理解した…

昨日の海賊を海軍に引き渡して来たのだと…。


「ミシェルのお陰でまた店が儲けたな…!!」

『私が賞金首を倒す度にタダ酒、振る舞ってたら、儲けも何もないでしょ…』

「客が喜べばそれでいいさ!!」

『…酒場店主の鏡だね…』


おちょくる様に言えば、トトさんは優しい笑顔を返してくれる。


『…海軍はもう島を出た?』

「あぁ…出航するのは見て来たよ…」


そんな空気から一転…私の発した言葉にトトさんの顔から笑顔が消え、真面目な表情になる。

よかった…と肩を竦めた私に、トトさんが顔を顰めた。


「…何だって、お前みたいな小娘を…」


言葉と共に頭に乗る大きな手…それは少し乱暴に髪を掻き混ぜた後、そこから出る尖った耳にするりと触れた。


「お前が何したってんだろうな…」


あぁ、涙腺が緩んできた…


『…トト、さん……』


声が掠れてる…どうしてか…トトさんの前では泣き虫だな…。


『私、何もして…ないよ…なのに、海軍は…』


ぽろぽろと零れる涙…そんなの気にせず、一緒に漏れ出す本音…。

分かってる…と全てを受け止めてくれるトトさんに、ついつい甘えてしまう。

…そんな時だった…。


―ガチャン…


その音と共に入り口が開き、人が入って来た…

まだ、営業時間には早いのに…そう思い目を向け、言葉を失う…。


「…どう言う状況だ?」

「あ!!店長がミシェル泣かせてる!!」

「違うんじゃないか?」

「…………………!!」


順にシャチさん、ベポ、ペンギンさんと…無言は船長さん。

状況を飲み込めないであろう3人(内1匹)とは裏腹に、船長さんは何かに気付いたように、一瞬目を見開いた。

私はと言うと、流れた涙を拭うことも無く、カウンターに座ったまま、ただ茫然と彼等を見ていた。
…そんな私の前までカツカツと歩み寄って来た船長さんを見上げる。

何だろう…と船長さんを見上げると、徐に手が伸びて来た…。


「…お前…」


そう言って、指先が触れたのは…


『…ぇ…あッ!?…うそ…』


トトさん以外には見せたことのない…特徴的な耳…。

私は驚きのあまり、咄嗟に立ち上がり…その勢いで座っていた椅子が盛大に倒れた。

どうしよう…見られた…どうしよう…!!


『…はぁ…はッ…はぁ…』


息が荒くなる…心臓が嫌な鼓動を刻む…体が震える…


「ミシェル…落ち着け!!大丈夫だ…!!」


トトさんは、冷静さを失った私をきつく抱き締め、頭をその大きな胸板に押し付けた。

徐々に落ち着きを取り戻していった私に、トトさんの腕の力が弱まったのを感じた。

…出来た隙間から見えた、ベポやシャチさん…ペンギンさんが、冷や汗を掻いている…。

無意識にかなりの殺気を放ってしまったらしい…

トトさんのお陰で、だいぶ落ち着いた…見られてしまった以上、仕方ない…。

下手な言い訳は通用しないだろう…それなりの覚悟を決めるしかないか…。






 
 

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