ONEPEACE 夢小説文
□裏町の酒場
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歩くこと数分…おれは再び足を止めた。今度は自分の意思で…
目の前には小さな酒場…。
この町は狭いわりに、細い裏道が多く、入り組んでいる。
お陰で、既に把握したと思われた町に見知らぬ酒場を発見したわけだが…
中が暗い事から、今はまだ準備中なのだろう…
「…飲んでくかい?」
夜にベポ達を連れて来てみるか、と踵を返した所で聞こえた声…。
声の方に顔を向ければ、買い物にでも行ったのだろうか…
両手にパンパンのビニール袋を提げた男が、人の良さそうな笑みを浮かべ立っていた。
「やってんのか?」
「一人くらい、構いやしねぇさ…ウチの酒は旨ぇぞ!!」
分かりきった上での疑問を口にすれば、何とも気前のいい答えが返ってきた。
ガチャリと扉の鍵を開け、まぁ入れよ!!と…飲むとも言っていないおれを招く男もとい店主。
特に用があるわけでもないため、おれは言われるがままに店に足を踏み入れた。
「…へェ」
…店内はシックを基調としたスタイルでぼんやりと灯るオレンジの照明が、何とも洒落た雰囲気を醸し出す…悪くねェ。
おれが辺りを見回していれば、既にカウンター内にいた店主が、酒の入ったグラスをスッと置いた。
おれはカツカツと歩みを進め、酒の置かれたカウンターに座る。肩に担いでいた長刀は隣の椅子に立て掛けた。
「…そりゃオレからの奢りだ!!」
ニカッと笑う店主を一瞥し、おれは酒に口を付けた。
「…!!…うめェ…」
鼻孔を刺激する濃厚な香りは、今まで口にした酒のそれとは別格だった。
思わず漏らした感想に、店主は気を良くしたのだろう…鼻歌が聞こえる。
「夜もこんな感じか?」
「ん?あぁ、そうだな。…あ、言っとくが女を侍らせてえなら、表通りの酒場に行けよ?」
「違ェよ…そこなら一度行ったが、おれは媚びる女は好かねェんだ…」
店主の妙な勘繰りに溜め息混じりに言葉を返す。
おれは今言った様に飲み屋の女が好きじゃない…それこそ、おれも男だから欲のために利用はするが、それだけだ。
加えて、その手の店の女達は気に入られようと必死で、話す口が止まらず煩ェ。
それに比べてこの店は…鬱陶しい女達がいるわけでもなく、キツい香水の臭いがあるわけでもなく、静かに酒を楽しめる。
要は気に入ったのだ…この店を。
俺はふと窓の外に目をやり、日が傾いて来ていることを知り、のそりと腰を上げた。
「今夜はやってるか?」
去り際に仲間も連れてきたいと話せば、返ってきたのは…あの人の良い笑みと肯定の返事。
今日は実に有意義な時間を過ごした…ログが溜まるまであと10日。
どうしたものかと思っていたが、案外何とかなりそうだ。
そんな事を思いながら、おれは船へ戻るべく、港へと足を向けた。